児童虐待の通告数11万人超、中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす「子供の貧困」7人に1人、家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」の小学生15人に1人…。国の統計を見ると、子供たちを取り巻く環境の悪さが如実に表れている。さらに、出生数は初めて80万人を割り、働き手の減少から国力の衰退へと進みつつある。
この状況下、首相の直属機関として、こども家庭庁が4月に発足する。省庁の縦割り行政の弊害を打破し、子供・子育て政策を総合的に推進する「司令塔」との位置づけだ。課題山積の状況は長年続いており、いまやお手並み拝見という次元を超えている。政府には抜本的な改善という結果を強く求めたい。
こども家庭庁は、少子化や児童虐待、子供の貧困、ヤングケアラーなど子供や家庭に現存する社会的課題を解決する役割を担う。それぞれの数値を見ると、どれも喫緊の課題になっていることが分かる。
出生率2・95の自治体に学べ
まずは少子化から見ていこう。令和4年の出生数は前年比5・1%減の79万9728人で、明治32年の統計開始以来、初めて80万人を割った。国が平成29年に公表した推計では、80万人割れは令和15年と見込んでおり、加速度的に少子化が進んでいる。