公示地価

住宅地、郊外の上昇エリア拡大 足元では都心回帰も

令和5年の公示地価では三大都市圏を中心に引き続き、郊外の住宅地の地価が上昇した。新型コロナウイルス禍によるテレワークの普及で、東京圏では都心部から郊外に転居する人が増加。今回は郊外での上昇エリアの拡大もみられた。ただ、社会経済活動の正常化が進む中、足元では都心回帰の動きが出てきたとの指摘もある。

東京圏の住宅地で地価上昇率1位は千葉県木更津市内の地点で、前年比20・9%上昇。首都圏とを結ぶ「東京湾アクアライン」が近いというアクセスの良さに加え、今年から順次開業予定の大型複合施設が市内にあることから、利便性向上への期待感が現れた。

これまで地価が上昇するのは駅から近い地点が多かったが、海に近い立地で人気が高い神奈川県の湘南エリアでは、最寄り駅から650メートル離れた茅ケ崎市の調査地点でも、プラス10・8%と大幅に上昇した。

国土交通省の担当者は「コロナ禍を経て住宅ニーズの多様化が進んでいる」とし、住宅を選ぶ基準が従来のような通勤利便性の偏重には戻らないと分析した。

三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭投資調査部門長も、コロナ前のような都心への転入超過水準には戻らないとみる。ただ、直近ではコロナ禍で大幅に減っていた千葉、埼玉、神奈川から東京23区への転入者数が、4年は前年より増えたことを指摘。コロナ以降に郊外を志向した人の多くは既に行動済みとした上で、「オフィス出社が始まったことで通勤のしやすさを重視する人が少し増えてきた」(坂本氏)と語った。

地価公示 地方住宅地28年ぶり上昇 全国平均プラス1・6% コロナ前に「回復顕著」

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