神戸連続児童殺傷から26年 続く見守り活動、高齢化でなり手不足も

登下校時に児童を見守る岸野高明さん。見守り隊は隊員の高齢化で存続が危ぶまれている=神戸市須磨区
登下校時に児童を見守る岸野高明さん。見守り隊は隊員の高齢化で存続が危ぶまれている=神戸市須磨区

平成9年に神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件で、山下彩花さん=当時(10)=が亡くなってから23日で26年。彩花さんが通っていた小学校区では、有志が「悲惨な事件を二度と起こさせない」と児童の登下校を見守る活動を行っている。だがメンバーの高齢化が進む中、新たな担い手を探すのは難しく、活動の継続があやぶまれている。

終業式を間近に控えた今月14日。神戸市須磨区の市立竜が台小学校前には、下校する児童らに「さよなら」と声を掛ける元教諭の岸野高明さん(77)の姿があった。

見守り活動が始まったのは平成20年。中学校を退職した岸野さんが、住民に推されて隊長に就任した。岸野さんは「それまでも個人で見守る人はいたそうだが、隊の発足後は組織的な活動になった」と話す。

発足当初のメンバーは22人。登下校時には全員が通学路に立った。岸野さんもこの15年間はほぼ毎日、子供たちを見守ってきた。

学区内は静かな住宅地だが、ひやりとしたこともあった。2年ほど前、3人の女児が「おっちゃん!」と叫びながら駆け寄ってきた。中年の男に突然、写真を撮られたという。

巡回すると学校近くの公園に男がおり、兵庫県警須磨署に通報した。おそろいのブルゾンを着て活動するメンバーは、子供たちに「安全」だと映ったのだろう。岸野さんはこのとき、活動の意義を改めて実感したという。

だがメンバーも高齢化し、現在見守り活動をしているのは実質4、5人。家族の介護や自身の体調不良などで参加ができなくなった人が多いという。岸野さんは数年前から自治会報で隊員を募集したり、知人に声をかけたりしてきたが、新たに加わったのは1人だけだ。自身も80歳になれば引退して次世代に託したいが、「このままでは見守り隊は自然消滅してしまう」と危機感を強めている。「再び凶悪事件が起きて、必要に迫られてから活動を再開するようなことはあってはならない」と話した。(倉持亮)

神戸連続児童殺傷事件 神戸市須磨区で平成9年2~5月、小学生5人が襲われる連続通り魔事件が発生し、3月23日に山下彩花さん=当時(10)=が死亡。5月27日には土師淳君=同(11)=の遺体の一部が発見された。兵庫県警は6月28日、中学3年だった14歳の少年を逮捕。関東医療少年院に収容された少年は17年1月に本退院した。昨年10月、事件の全記録を神戸家裁が廃棄していたことが明らかになり、最高裁は有識者委員会を立ち上げ、ほかに廃棄された事件記録も含めて経緯を調査。4月をめどに結果をまとめ公表するとしている。

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