追加物価対策、景気浮揚効果は限定的 巨額予備費「便利な財布」に懸念

首相官邸=東京都千代田区(矢島康弘撮影)
首相官邸=東京都千代田区(矢島康弘撮影)

政府が22日決定した総額2兆円超の追加物価高対策は、令和4年度予算で計上した「予備費」を活用する。巨額の予備費は新型コロナウイルスの感染拡大を契機に定着。国会審議を経ず政府の裁量で使えるため、不測の事態に迅速な対応が可能となる一方、「政府の便利な財布」としての乱用を懸念する声もある。

予備費は、予期できない自然災害などの対策に備えるための費用。国会で使い道を議論しないため、事前議決を原則とする「財政民主主義」の下では例外とされる。

予備費は毎年、当初予算で数千億円の計上が通例だった。東日本大震災などの対応のために上積みされたケースはあるが、コロナ禍以前は2兆円を超えることはなかった。

だが、コロナ感染の拡大が始まった令和2年度に一気に約10兆円に膨れ上がると、その後は物価高対策としても活用されるようになり、巨額の予備費が常態化。5年度当初予算では5兆5千億円が計上された。

この状況について、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「(予備費が)補正予算を組まなくても使える政府の便利な財布になっている。名目も中身も事実上の経済対策で、本来の予備費の趣旨が拡大解釈されてしまっている」と苦言を呈す。

また、野村総合研究所の木内登英(たかひで)エグゼクティブ・エコノミストは、今回の追加対策の景気浮揚効果は5150億円分にとどまると分析。「いたずらに規模を追求して景気刺激を狙った巨額の財政支出を伴う物価高対策は必要ない」と強調する。

国の財政収支はコロナ禍で悪化の一途をたどり、借金である普通国債の発行残高は1千兆円を超えており、財務省内からは「巨額予備費が目立たないほど歳出が膨らんでいることが問題だ」(同省幹部)と、財政規律そのものの緩みに警戒感が出ている。

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