鬼筆のスポ魂

虎のサトテルは脱皮できるのか…攻守に大きな課題

佐藤輝の攻守での脱皮が「アレ」(優勝)を左右する。今シーズンの岡田監督の期待は大きい
佐藤輝の攻守での脱皮が「アレ」(優勝)を左右する。今シーズンの岡田監督の期待は大きい

〝虎のサトテル〟からの脱皮に2つの課題-。岡田阪神はオープン戦12試合を消化し7勝5敗。3・31シーズン開幕DeNA戦(京セラ)までオープン戦は残り5試合ですが、岡田彰布監督(65)から5番三塁定着を求められている佐藤輝明内野手(24)の現状はどうなのでしょう。オープン戦12試合に出場して打率2割4分4厘、1本塁打の6打点。豪快な一発を放ったかと思えば連続三振の〝落差〟は相変わらずで、三塁守備でも不安定な姿が…。今季こそ攻守の課題を克服してほしいですね。次回のWBCでは阪神の主砲というだけではなく、日本代表の主砲として出場するような選手に成長すれば、今季のアレ達成も近づきます。

ファン注目の岡田語録

岡田監督が15年ぶりに帰ってきて始まった春季キャンプやオープン戦はファンの大きな期待に包まれて進行しています。練習終了後や試合終了後の監督語録はかなりの注目度ですね。もう20年以上前の野村克也監督(1999年~2001年)の「ノムラ語録」は野球界のみならず、経済界の人たちが人材育成や組織の束ね方の参考にし、大いに注目を集めました。今回の「岡田語録」もなるほどそんな考え方があったのか…とか、思わず笑ってしまう言葉も多く、阪神ファンのみならず全国の野球ファンが注目しています。

ただ、少々ひねくれた表現を使うならば、そうした岡田語録に説得力があるのは2005年の優勝監督であり、阪神やオリックスでの指導者としての豊富な経験があるからです。そうした観点で見るならば、岡田語録がこの先も阪神ファンに歓迎、支持されるためには今シーズンに結果を出さないといけないでしょう。いくら素晴らしい事を話しても、チームの成績が悪ければファンの心は離れていきます。かつての野村監督も3年連続最下位で最初は持てはやされた「ノムラの考え」も次第にファンから反感を買うようになりました。なので、あれだけしゃべっていたノムさんが最後には「沈思黙考」…。岡田監督も同じ道を歩まないように3・31シーズン開幕以降は何よりも「チームを勝たせること」が求められます。

監督の期待度高い佐藤輝

ならば「勝つ」ためにはどうすればいいのか…ですが、それはもう岡田監督がチーム編成の骨格に置いた大山一塁4番・佐藤輝三塁5番が機能し、相手を倒していくことでしょう。特に今シーズンがプロ3年目の佐藤輝には期待度も高いですね。ルーキーイヤーの2021年は打率2割3分8厘、24本塁打、64打点。2年目の昨季は打率2割6分4厘の20本塁打、84打点。プロ入りから2年連続の20本塁打超えです。

矢野前監督は右翼や三塁など複数のポジションを守らせていましたが、岡田監督は早々に「三塁固定」を宣言し、春季キャンプから三塁以外のポジションに就いたことはありません。佐藤輝が今シーズン、ワンランクもツーランクも上の選手に成長し、監督の期待に応えればチームの「アレ」(優勝)の可能性も高くなるはずです。

では、現状の佐藤輝はどうなのか。オープン戦では12試合に出場し、打率2割4分4厘、1本塁打、6打点です。17日のヤクルト戦(神宮)では開幕投手候補の小川から右翼席に放り込む豪快な一発を放ちました。ところが、19日のヤクルト戦(神宮)では4打数ノーヒット3三振。ツボにはまれば豪快な一発を放つ一方で打てないときはモロさが見え隠れ…ですね。

ちなみにオープン戦41打数で14三振。プロ1年目が425打数で173三振、2年目が541打数で137三振。三振率は徐々に低下していますが、やはり今オープン戦でも三振の多さは相変わらずです。そういった書き方をすると「三振も外野フライや内野ゴロも1つのアウト。三振ばかりを悪いと決めつけるな」とお叱りの言葉が飛んできそうですが、ここではなぜ三振が多いのか…を専門家に分析してもらいました。

佐藤輝の弱点、投手目線で指摘

阪神でも開幕投手を何度も務めたOBが佐藤輝への「攻略法」を投手目線で語りました。

「佐藤輝の打撃はプロ入りから基本的にはずっと変わらないんだけど、投手からすればインハイ(内角高め)を強い球で突くことで簡単にワンストライクが取れる。インハイで追い込めるから、後の配球も楽になる。なので、逆にインハイのボールをヒットにしなくてもいいから、鋭い打球で打ち返してほしい。ならばバッテリーも考え出す。簡単にインハイでワンストライクを相手に与えているうちは打率も上がらないし、三振率も大きくは改善しないと思う」

インハイを見事に打ち返すには、たとえば配球を読んでスタンスを変える(少しバッターボックスの後ろに立つ)とか、グリップを短めに持つとか…があるようですが、何らかの工夫でインハイ=ワンストライクの現状を変える必要性を説いていました。

今年の春季キャンプでは左耳の上にあったグリップの位置を多少は下げ、一時はバットを寝かせ気味に構えた時期もありました。岡田監督が「グリップが高すぎるんや」と指摘していたことも影響があったと思います。ただ、阪神OBは今オープン戦でも相手バッテリーの「サトテル攻略法」はほとんど同じで、インハイを攻めて外角に落とす-が基本線だと指摘しましたね。つまり佐藤輝が逆に相手バッテリーに新たな攻略法を考えさせる打撃を見せないと、ワンランク上の打撃に上がっていけない…と言うのです。

守備の修正点は「横着」さ

さらに守備面でも課題があります。三塁で固定されていますが、送球ミスやファンブルによるエラーが何度か見受けられました。19日のヤクルト戦でも八回2死一塁の場面で三塁ゴロをファンブルし、ピンチを広げてしまいました。エラーは仕方ない一面はあるのですが、むしろ問題は岡田監督が指摘した一言ですね。

「横着な守備しとるな」

ベンチから見た佐藤輝の捕球や送球の姿勢に「横着な」印象を受ける…。これは是正ポイントでしょう。何をもって横着に見えるのか。岡田語録なので、独特は言い回しでしょうが、つまり往年の名内野手からすれば投手が投球モーションに入った際の姿勢や、ゴロが飛んで来たときのグラブさばきなどが雑に見えるのではないでしょうか。もし、本人が意識していない部分で横着とか雑に見える部分があるのであれば、守備コーチの指導を受けて是正した方がいいですね。

「投手心理から言えば、一生懸命に守ってくれた上でエラーなら仕方ない…とマウンド上で割り切れる。でも、雑なプレーでせっかく打ち取った打者を塁上に生かすのは気持ちの面で吹っ切れない。次の投球に影響が出る。監督から『横着や』と言われる守備の姿勢は直さないと、いくら打っても投手陣からは信頼されない」と阪神OBの一人は話しました。

佐藤輝はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の侍ジャパンの予備メンバーでしたが、8人の内野手メンバーには入れませんでした。次回(2025年予定)のWBCでは攻守ともに成長して、ぜひ侍ジャパンのメンバー入りを果たしてほしいものです。そのためにも今シーズンは攻守の課題を克服して、まずは18年ぶりのアレ達成の原動力になってほしいものです。

植村徹也

うえむら・てつや 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。


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