「世界はだまされるな」 米国が中露首脳会談を牽制

20日、ロシア・モスクワで会談するプーチン大統領(右)と中国の習近平国家主席(タス=共同)
20日、ロシア・モスクワで会談するプーチン大統領(右)と中国の習近平国家主席(タス=共同)

【ワシントン=坂本一之】ブリンケン米国務長官は20日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席の会談に関し、「中国などの支援を受けるロシアが自国の条件でウクライナでの戦争を止める戦略的な動きに、世界はだまされるべきではない」と述べた。バイデン米政権は、ロシアが中国と連携してウクライナとの和平交渉を有利に進めようとする動きを警戒している。

ブリンケン氏は、「ウクライナ領土からの露軍撤退を含まない停戦を求めることはロシアによる征服を支持することになる」と中国を牽制(けんせい)。露軍撤退が戦争終結への前提だと強調した。「ウクライナの主権と領土の一体性」を維持しない交渉は「建設的な外交ではない」とクギを刺した。

さらにブリンケン氏は、国際刑事裁判所(ICC)がプーチン氏に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した後に習氏が訪露したことを指摘。「ロシアに残虐行為の責任を問う義務を感じていないことを示している」と述べ、習氏に対する不信感も示した。

米国は日欧と連携し国連でロシアへの非難決議の採択などを進め外交圧力をかけるが、ロシアを支持する国や棄権する国もいる。

今年2月の国連総会(加盟193カ国)では、露軍の即時撤退などを求める決議案を141カ国の賛成で採択したものの、シリアや北朝鮮など7カ国が反対し、中国やイラン、インドなど32カ国が棄権した。

ロシアと関係を深める中国がウクライナを巡る和平交渉で影響力を高めれば、ロシア寄りの国際世論が広がる恐れもある。ウクライナ支援に注力するバイデン政権は、ロシアを後押しする中国の動きに神経をとがらせている。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、ウクライナ軍が露占領地を完全に奪還するのは「年内は困難だ」とし、戦闘が長期化するとの見通しを示している。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は20日、露軍が撤収しない停戦になれば「ロシアは有利な時期に戦争を再開できる」と警鐘を鳴らした。

中露首脳が会談 ウクライナ「和平案」を協議


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