クレディ救済、スイス政府の積極仲介でスピード決着

スイス金融大手のUBSとクレディ・スイスのロゴ=19日、スイス・チューリヒ(ロイター)
スイス金融大手のUBSとクレディ・スイスのロゴ=19日、スイス・チューリヒ(ロイター)

【ロンドン=板東和正】今月15日の株価暴落からわずか4日でスイス金融大手のクレディ・スイスの破綻を回避する「救済策」がまとまった。早期に決着したのは、スイス政府などが2008年のリーマン・ショック以来となる金融危機の再来を防ぐため、金融大手UBSによる買収を強力に後押ししたためだ。

現地メディアなどによると、買収交渉は18~19日の週末、クレディ・スイス、UBSの2社のほか、スイス政府やスイス国立銀行(中央銀行)などの間で進められた。

スイス政府は株式市場で週明けの取引が始まる前の19日を期限と定め、UBSによる買収をめぐる交渉を積極的に仲介。スイス中銀から大規模な融資枠を取り付けたほか、緊急的な措置としてUBSとクレディ・スイスが株主の同意なしに買収の手続きを進められるようにした。UBSが買収に伴う訴訟などで損失が発生した場合の費用も保証する方針を示した。

第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「政府がここまで危機感をもって迅速に買収交渉に介入する例は世界でも珍しい」とした上で「素早い政府の対応がなければこれだけの〝スピード決着〟には至らなかった」と述べた。

世界50カ国以上で事業を展開するクレディ・スイスが破綻すれば「スイスの金融市場に甚大な被害をもたらし、国際的に(影響が)連鎖する危険性もあった」(スイスのカリン・ケラー・ズッター財務相)。

UBSによるクレディ・スイスの買収額は30億スイスフラン(約4300億円)。交渉過程で報じられた10億ドル(約1320億円)から増えたとはいえ、スピード決着を優先したこともあり、17日時点で1兆円規模に上った時価総額の半分以下の買収金額となった。

UBS、クレディ・スイス買収・合併を発表 世界的な金融危機回避に期待


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