【シンガポール=森浩】インド訪問中の岸田文雄首相が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の新たな行動計画を発表した。インドとの2国間関係の強化とともに、南半球を中心とした途上国「グローバルサウス」(GS)を念頭にした支援強化の方針を示した。インドはGS支援に向けた日本の関与拡大を歓迎。日印連携により、途上国浸透を図る中国に対抗する構えだ。
岸田氏は20日の講演で、政府開発援助(ODA)の戦略的活用による自由で開かれたインド太平洋の推進を表明。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」がGS諸国に生んでいる債務負担を念頭に、「不透明な開発金融を防ぐルール作り」の重要性を強調した。
インドは1月にGS首脳を招待したオンライン会議を開催するなど、GSのリーダーとして名乗りを上げている。今年の20カ国・地域(G20)議長国でもあり、対外債務処理に苦慮するGSの声を議事に反映させると明言。インドにとり、友好国日本によるGS支援強化は弾みとなる。
また、岸田氏が講演で、安全保障面の連携を「海上から空に」拡大する方針を掲げたこともインドにとって重要だ。インド北部の係争地では中国が軍事インフラ整備を進め、現状変更の動きを止める兆しはない。そうした中、日本などとの多国間の連携で牽制(けんせい)していく動きが強まりそうだ。
中印関係に詳しいインドのジンダル・グローバル大のスリパルナ・パサク准教授は産経新聞の取材に「日印は共同でGSにおける中国の影響力拡大と巨額の債務問題に挑む考えだ」と指摘。岸田氏がインドからインド太平洋をめぐる新計画を発信したことに注目し、「日印連携の高い戦略的価値を示すためであり、同時に中国へのメッセージでもある」と分析した。