<特報>モデルナ、コロナとRSウイルス混合ワクチン実用化へ

RSウイルスワクチンなどの実用化に意欲を語るモデルナ・ジャパンの鈴木蘭美社長=大阪市北区
RSウイルスワクチンなどの実用化に意欲を語るモデルナ・ジャパンの鈴木蘭美社長=大阪市北区

新型コロナウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを実用化した米モデルナの日本法人、モデルナ・ジャパンの鈴木蘭美(らみ)社長が産経新聞の取材に応じ、呼吸器疾患をもたらすRSウイルスに対する高齢者向けのmRNAワクチンについて、日本でも承認を目指す方針を明らかにした。さらに同社は、政府が定期接種に向けて検討を進めている新型コロナワクチンを巡り、RSウイルスワクチンとの混合ワクチンを、数年以内に実用化したい考えを示した。

モデルナは今年1月、22カ国で60歳以上を対象に実施しているRSウイルスワクチンの臨床試験(治験)で有効性の主要な評価項目を達成したと発表。米食品医薬品局(FDA)が同月、審査を迅速に行うための「画期的治療薬」に指定した。今年前半に米国などで承認申請する予定で、鈴木氏は「日本でもいち早く承認を得て提供していきたい」と述べ、早期の申請を目指す意向を示した。

呼吸器疾患を引き起こすRSウイルスは感染力が強く、乳児の細気管支炎やウイルス性肺炎の主な原因となる。基礎疾患のある高齢者も重症化しやすい。

現在、RSウイルス感染症を予防するワクチンはなく、世界で開発競争が進んでいる。国内では英グラクソ・スミスクライン(GSK)が昨年10月に60歳以上を対象としたワクチンについて、米ファイザーが今年2月に母子免疫のためのワクチンについて、それぞれ厚生労働省に承認申請した。

一方、モデルナの鈴木氏は新型コロナのオミクロン株に対応した追加接種用ワクチンについて「変異株を見定めた最新のワクチンを、各国の規制当局と協議しながら、今年秋冬に接種を開始できるよう提供したい」と話した。さらにRSワクチンとの混合ワクチンを年1回、秋冬に接種すれば「呼吸器疾患の重症化から人々を守ることができる」として、「近い将来出したい」と語り、来年にかけて開発などの取り組みを進める。

新型コロナウイルスワクチンは接種が普及して需要の縮小が予想され、ワクチンメーカー各社は戦略の再構築を迫られている。モデルナはがん治療にもmRNAワクチンを活用する方針を模索し、現在は悪性黒色腫(メラノーマ)で治験が進む。

鈴木氏は「mRNAワクチンは、自分の細胞がつくるタンパク質を生かして感染を防ぐ革新的な技術。今後もmRNAによる新薬を提供していきたい」と意欲を示した。(牛島要平)

RSウイルス 夏から冬に流行する季節性のウイルスで感染性が強く、重症化すると気管支炎や肺炎などの呼吸器疾患を引き起こす。ほぼすべての乳幼児が2歳までに感染し、生後6カ月未満で感染すると重症化するおそれがある。日本では毎年約12万~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断される。高齢者でも、ぜんそくや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの基礎疾患を悪化させる危険性がある。

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