20日の参院予算委員会では、放送法の行政文書を巡る審議での高市早苗経済安全保障担当相の孤立無援の現状が浮き彫りとなった。立憲民主党は高市氏の15日の予算委での「もう質問しないでほしい」との発言を追及したが、自民党の末松信介参院予算委員長も異例の注意を行い、高市氏は発言の撤回に追い込まれた。
「閣僚が国会議員の質問する権利を否定することは大きな間違いだ」
末松氏は予算委で高市氏にこう注意した。問題となったのは15日の予算委での高市氏と立民の杉尾秀哉氏とのやり取りだ。杉尾氏が文書を巡り「(高市氏の答弁が)ずるずる変わっている」と挑発したのに対し、高市氏は「私の答弁が信用できないならもう質問しないでほしい」と反論した。
立民は発言を問題視し、撤回しない場合、令和5年度予算案の審議に応じない構えもみせた。高市氏の強気の態度は変わらなかったが、審議への影響を懸念する首相官邸は「質問しないでほしい」という部分の高市氏の答弁撤回を求めた。
政府・自民党内にはこの問題について、高市氏を擁護する声は多くはない。高市氏が立民議員にあおられ、文書が「捏造(ねつぞう)」でなければ閣僚や議員を辞職すると進退問題に発展させたことを冷ややかに見る向きもあるからだ。
この日の午前中の審議では自民の広瀬めぐみ氏も「さまざまな事情があると拝察するが、自民の立場としてもこの発言は遺憾だ」と指摘した。高市氏は「真摯(しんし)に答弁するように心がける」と述べるにとどめたが、午後の審議で一転、「国会の審議に迷惑をかけるのは本意ではない」と語り、質問拒否との指摘を受けた答弁に限り撤回した。
「国対などから多大な説得を受けた。委員会は動かさないといけないから」。高市氏は撤回の理由を周囲にこう語り、議場を後にした。(永原慎吾)