沖縄県石垣市の石垣島に離島防衛の要(かなめ)となる陸上自衛隊の駐屯地が開設され、南西諸島における陸自の空白状態が解消された。
だが、石垣駐屯地の開設はゴールではない。スタートラインである。
周辺海域では、中国による軍事的脅威が高まっている。防衛省は駐屯地がその機能を十分に発揮できるよう、装備などの充実強化を急がなくてはならない。
九州南方の大隅諸島から先島諸島まで約1200キロにわたる南西諸島には長く、沖縄本島を除き陸自の拠点がなかった。
このため防衛省は平成22年策定の防衛大綱で部隊配備の方針を打ち出し、28年以降、沖縄県の与那国島、宮古島、鹿児島県の奄美大島に駐屯地が開設された。
石垣駐屯地は、いわば空白を埋める最後のピースで、地対空、地対艦ミサイル部隊など570人規模の隊員が配備される。
一方、この間も中国は軍事力を拡大してきた。2023年の国防費は前年比7・2%増の1兆5537億元(約30兆円)で、伸び率は昨年(7・1%)を上回る。
とくに海上戦力の増強が進んでおり、最新鋭の駆逐艦や空母など米海軍を上回る規模の艦艇を保有するに至っている。
中国の暴走を防ぐには、自衛隊と在日米軍との連携はもちろん、最前線となる南西諸島の各駐屯地の機能強化が不可欠である。防衛省は、台湾に最も近い与那国駐屯地や沖縄本島にもミサイル部隊の配備を検討しており、早急に実現しなければならない。
問題は、沖縄県の玉城デニー知事が「基地負担が増える」として、自衛隊増強への反対姿勢を強めていることである。石垣駐屯地の開設にも「十分に住民合意が得られているとは言い難い」とのコメントを発した。
日本の守りと県民の命を最優先に考えるべき立場にありながら、現状認識が甘すぎる。
石垣市の中山義隆市長をはじめ地元自治体の首長は、いずれも駐屯地の開設を評価している。
玉城氏がなすべきは、地元首長の意見を十分に聞いた上で、国との対立ではなく協力姿勢へと転換することである。
台湾有事となれば、沖縄が巻き込まれるのは必至である。最悪の事態に備え、さらなる抑止力の強化に努めてもらいたい。