「人をひいたやろ。逃げたらあかんやろ」。道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで現行犯逮捕された斉藤敏夫容疑者(74)は、警察官の言葉にも表情を変えることなく、パトカーに乗り込んだという。大阪市生野区などで20日、タクシーにはねられ4人が死傷した事故。斉藤容疑者がハンドルを握るタクシーは、少なくとも約800メートルに渡って、事故を起こしながら猛スピードで逃走を続けていた。
20日午後1時10分ごろ、大阪市生野区田島の交差点で最初の事故が発生した。高齢女性2人と自転車の男性がはねられ、現場に駆け付けた飲食店従業員の女性は「血だまりができていて、1人は手を握っても反応がなかった」と話す。
軽乗用車を運転していた30代女性はその直後、今里筋を猛スピードで南下する斉藤容疑者のタクシーを目撃。「左側の車線からスポーツカーみたいな速さで抜いていき、やばい人が運転しているなと思った」。その先でミニバイクへの接触事故を起こしており、女性の軽乗用車はバックしてきたタクシーに衝突された。「私の車と壁の間に突っ込んできて、アクセルを5秒くらいふかしていた。逃げる暇もなく猛スピードだったので、本当に怖かった」と振り返った。
目撃者によると、タクシーは植え込みに突っ込んでからもしばらくアクセルをふかし続けており、ボンネットからは煙が上がっていたという。