衝撃事件の核心

「除名」見計らい逮捕状 急速に狭まるガーシー包囲網

国会に一度も登院しないまま除名となり、国会議員の身分を失ったタイミングを計っていたかのように、除名翌日の16日、警視庁が著名人らを脅迫したなどとする暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの容疑で、前参院議員のガーシーこと東谷義和容疑者(51)の逮捕状を取った。東谷容疑者は拠点とする海外から帰国せず「徹底抗戦」の構えを見せているが、警視庁は国際手配や旅券返納命令に向けた調整を進めるなど「包囲網」を狭める。「帰国して、責任を取ってほしい」。被害を受けた男性も憤りを隠せない。

「陳謝」の約束果たさず

「これで一生帰国しないことを覚悟できました」

「窮屈な世界に帰りたいと思いません」

警視庁が逮捕状を取った16日、東谷容疑者は、インターネット上の動画配信でこう主張。捜査当局への不満をぶちまけ、今後、転居して住所も明かさない方針を示した。

事の発端は、東谷容疑者による動画投稿サイトへの配信だった。

兵庫県出身の東谷容疑者は会社員を経て、東京都心でバーの経営などをする中で、著名人との交友を深めたとされる。一方で、著名人とは別のトラブルを機に、令和3年12月にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに渡った。

ガーシーこと東谷義和容疑者
ガーシーこと東谷義和容疑者

その後、交流があった著名人らの暴露話を動画投稿サイトのユーチューブに投稿。「暴露系ユーチューバー」として注目を集めるようになった。東谷容疑者のチャンネル登録者数は100万人を超え、「すさまじい影響力だった」(関係者)。

過激な投稿内容は衆目の関心を引く一方、捜査関係者によると、脅迫交じりの文言が散見され、著名人本人ばかりか、その家族の名誉を傷つける内容も含まれていたという。

昨夏の参院選では、知名度をいかして比例代表で初当選を果たしたものの、暴露配信に絡み逮捕される懸念があるなどと繰り返し主張。一度も登院しない姿勢が問題視された結果、参院は今年2月に「議場での陳謝」を科す懲罰を決定。東谷容疑者はいったん陳謝に応じる意思を示したが、約束を破り、帰国せず、3月15日に除名となった。

任意聴取にも応じず

警視庁の動きは早く、翌16日には、逮捕状の取得に踏み切った。

容疑は暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)のほか、威力業務妨害、名誉毀損(きそん)、強要に及んだ。捜査関係者は、このタイミングでの逮捕状取得について、昨年12月以降、6回以上にわたる任意の事情聴取要請に従わず、証拠隠滅の恐れもあると説明しているが、国会議員の身分を失ったことも少なからず影響しているとみられる。

国会議員は憲法で会期中の不逮捕特権が認められており、逮捕に際しては国会への逮捕許諾請求などの手続きが必要になる。除名でハードルが下がったことも大きかったとみられる。

ただ、逮捕が実現するまでには、課題もある。

東谷容疑者は今後も海外にとどまり続けると宣言しており、逮捕状の効力は海外には及ばない。警視庁は東谷容疑者を帰国させるため、パスポート(旅券)の返納を警察庁を通じて外務省に要請した。

外務省から旅券返納命令が出されれば、東谷容疑者に通知される。それに従って帰国すればいいが、従わない場合は旅券を失効。滞在国が不法滞在と判断すると、強制退去措置が取られる。

日本が国外逃亡した容疑者の引き渡しに関する相互義務を約束した「犯罪人引き渡し条約」を締結しているのは、米国と韓国のみ。警察当局は、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配も行うが、手配は加盟国に所在確認などを求めるものに過ぎない。

このため、警察当局は外交ルートを通じて身柄の確保や引き渡しを求めていくことになるが、友好国であるUAEであれば、東谷容疑者の強制送還が実現する可能性もある。

「帰国して責任を」

除名からの逮捕状取得…。東谷容疑者を巡る動きは一気に加速した。実際に東谷容疑者から誹謗(ひぼう)中傷や脅迫を受け、刑事告訴した都内在住のジュエリーデザイナー、福谷公男さん(47)は「告訴人をさらに脅迫することは容認できない」と、自ら帰国することを求める。

東谷容疑者にネット上で脅迫されたと明かす福谷公男さん=16日、東京都千代田区(塔野岡剛撮影)
東谷容疑者にネット上で脅迫されたと明かす福谷公男さん=16日、東京都千代田区(塔野岡剛撮影)

福谷さんは約20年前に東谷容疑者と知り合い、たまに食事するような間柄だったが、昨年4月に突然ユーチューブで事実無根の暴露話を配信されたという。

インターネット上を中心に脅迫や誹謗中傷を受け、家族の写真もネット上で拡散されたとする。福谷さんは「当時(東谷容疑者の)チャンネルには100万人以上の登録者がおり、影響力は大きかった」と語る。

福谷さんが経営するジュエリーショップは昨年3月にリニューアルし、動画が配信された4月に再オープンしたばかりだったが、閉鎖せざるを得なくなった。

福谷さんは配信の内容が事実無根であることを証明するため、刑事告訴を決断。それを知った東谷容疑者は今年2月、再び脅迫や誹謗中傷を始めた。「お前こんなことをして何の得があるのか」。自身の交流サイト(SNS)で、まくしたてた。

福谷さんは「刑事告訴している人への脅迫は容認できない。法治国家に対する冒瀆(ぼうとく)行為で、これが許されるのであれば、刑事告訴は機能しなくなる」と語気を強め、「海外で好き放題に動画などを配信している状況だが、人の人生を壊している。帰国し、警察の事情聴取を受け、裁きを受けてほしい」と訴えた。(宮野佳幸、塔野岡剛)

ガーシー容疑者の旅券返納命令要請 警察庁

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