「みごとなホームランでした」とインタビュアーがマイクを向けた。お立ち台の上にはプロ野球・阪急の強打者、ブーマー選手がいる。「相手投手もよかったよ。緩急をつけてね。僕の調子が上がってきてほっとしている」
▼およそ30秒。ヒーローは英語でまくし立て、マイクが隣に向けられた。通訳はひとこと「そやね」。ブーマー選手がファンへの感謝を並べても「うん、『あしたも頑張る』と言うてる」。板についた関西弁と要点以外をはしょった大胆な日本語訳に、観客は大喜びで帰途についたという。
▼その通訳は「チコさん」と呼ばれていた。スペイン語で「坊や」の意味だという。キューバ出身のロベルト・バルボンさんである。俊足巧打の内野手として、阪急では3度、盗塁王に輝いた。ご記憶のオールドファンも多いだろう。