「反日」に翻弄された日韓経済界 尹大統領は経済的成果急ぎ

日韓の経済団体の会合に出席した韓国の尹錫悦大統領(左)と経団連の十倉雅和会長=17日午後、東京都千代田区(経団連提供)
日韓の経済団体の会合に出席した韓国の尹錫悦大統領(左)と経団連の十倉雅和会長=17日午後、東京都千代田区(経団連提供)

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は17日、東京都内で開かれた日韓の財界要人らとの会合で、経済分野における日韓協力の強化に期待を示した。いわゆる徴用工訴訟問題で尹政権が発表した解決策には韓国内で反発が強く、国民を納得させる経済的成果が必要だからだ。ただ、韓国の反日世論や政治に翻弄されてきた日韓の経済界には乗り越えるべき壁も高い。 (桜井紀雄)

尹氏は、経団連や韓国の経団連に当たる全国経済人連合会(全経連)が意見交換する会合「ビジネスラウンドテーブル」に出席。悪化した日韓関係を「未来志向的な関係に転換させ、新たなビジネス協力の枠組み」がつくり出されていくことに期待を寄せた。

韓国側からは、サムスン電子の李在鎔(イジェヨン)会長や現代自動車グループの会長ら韓国経済を牽引(けんいん)する4大企業グループのトップが参加したが、いずれも全経連を脱退した状態で、個別の出席となった。2016年の当時の朴槿恵(パククネ)大統領の友人の国政介入事件に絡み、スポーツ財団への出資が大統領側への贈賄行為とみなされ、癒着との批判を受けて相次ぎ脱退したからだ。

韓国の財界が政治に翻弄されてきた端的な例だ。19年に日本の対韓輸出管理厳格化に文在寅(ムンジェイン)前大統領が激しく反発し、日本製品への不買運動が起きた際は韓国で人気だった日本製ビールの売り上げが激減するなど、日本企業も韓国の政治動向に巻き込まれてきた。

韓国の財界関係者は「文政権は大企業を敵視する偏見も強く、企業活動が萎縮させられた」と振り返る。

これに対し、尹氏は16日の在日韓国人との懇談会で「韓日問題を国内政治に利用してはならない」と述べるなど、就任以来、政府は企業活動を邪魔すべきでないとの立場を強調してきた。自ら「韓国の営業社員だ」と称し、欧州や中東で原発や防衛装備品の売り込み、韓国への投資呼び込みを精力的に進めてきた。

尹氏は16日の岸田文雄首相との会談で半導体のサプライチェーン(供給網)強靭(きょうじん)化など幅広い分野で協力を促進する方針で一致した。ただ、日本の輸出管理厳格化が日韓の半導体業界に与えた影響が限定的だったのに対し、米政府の対中半導体輸出規制の影響を日韓の業界もこうむるなど、米中対立が供給網に及ぼす影響は大きい。深まる米中対立に日韓の経済界が一致して対応できるまで連携を高められるかは未知数だ。

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