日韓の経済団体は17日、東京都内で会合を開いた。政治的な対立とともに冷え込みを余儀なくされてきた日韓の経済関係は、改善へと歯車が動き出した。韓国は日本の貿易相手の上位5カ国に長年入り続ける重要な隣国だ。経済安全保障上のリスクへの対応でも関係強化は欠かせないとの思いが日本の経済界には強いが、過去の経緯から不安もある。
会合は経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)が共催。経団連の十倉雅和会長や、韓国・サムスン電子の会長ら財界人が参加し、経済協力の強化や経済安全保障分野での課題解決などについて意見交換した。
十倉氏は冒頭で「未来志向の日韓関係構築に向けた道筋を確固たるものにするための重要な第一歩だと確信している」と発言し、連携強化に期待を示した。
韓国の産業構造は外国から輸入した部品や素材、製造機械で完成品を作って輸出する「水平分業」の色合いが濃い。協業の強化は日本の産業界にも「ウィンウィン」の成果をもたらす。
日本の対韓貿易収支は黒字が続き、「経済界からすれば日韓関係が緊密であることが望ましい」(日本商工会議所の小林健会頭)というのが本音だ。
意見交換会では、日本側から「両国の連携は経済安保の上で死活的に重要」との指摘もあり、韓国側からも「サプライチェーン(供給網)の連携強化に取り組みたい」と前向きな発言が相次いだ。
ただ、日韓の民間交流は政治に翻弄され、韓国で日本製品の不買運動なども起きた。経団連と全経連は1983年から一時期を除き相互訪問してきたが、新型コロナウイルス禍の影響で2019年11月に中断。尹錫悦(ユンソンニョル)政権の発足を受け、昨年7月にソウルで3年ぶりに再開した経緯がある。福島第1原発事故を巡る日本産食品の輸入規制や原発処理水の海洋放出への対応など、両国経済が緊密さを取り戻すための課題はなお多い。(村山雅弥)