岸田文雄首相は17日、官邸で記者会見し、重要課題に掲げる少子化対策に関し、子育てのために時短勤務をしている人を対象に現金給付制度を設ける考えを明らかにした。賃金が減るために子育てと仕事の両立を諦めるケースを防いだり、完全な休業が難しい男性の育児参加を進める狙いがある。育児休業給付については、「産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を手取り10割に引き上げる」と述べた。
現在、育休給付金は育児期間中に原則完全に休業した場合しか支給されない。時短勤務でも現金給付を行うことで、フルタイムで働いてきた男性の育児参加を促し、共働き夫婦が役割分担しながら育児と勤務を両立できる環境を整える目的もある。
育休給付のうち、男性が最大4週間取得できる「産後パパ育休」では、給付率引き上げと社会保険料免除により休業前の手取り収入の事実上全額を受け取れるようにする。男性の育休取得率の政府目標は、現在の令和7年度までに「30%」から「50%」に引き上げ、さらに12年度は現在の女性並みの85%に引き上げる方針を打ち出した。
取得率向上の鍵を握る中小企業への支援検討も表明した。育休制度の対象外となるケースの多い非正規やフリーランスなどに対し、新たな経済支援制度を創設する考えも示した。
首相は、一定の年収を超えると社会保険料の負担が生じて手取りが減る「年収の壁」が、若い世代の所得増を阻む要因の一つだとも指摘。「手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援を導入する」と表明した。国が時限的に企業に助成金を出し、保険料の負担軽減を図る方向で調整する。
また、社会全体の子育てに対する意識を変えると強調し、「こどもファスト・トラック」を全国的に設けると発表した。国立博物館など国の施設に設置し、子連れの人が窓口に並ばずに入場できるようにする。
焦点の児童手当の拡充を含む支援強化については「兄弟姉妹の多い家庭の負担、高等教育における教育負担などを踏まえる」と説明した。教育財源をまかなうための「教育国債」に関しては「慎重に検討する必要がある」と述べた。
記者会見は、少子化対策に関するたたき台の取りまとめを3月末に控え、首相が改めて対策の方向性を説明する目的で実施した。