【ロンドン=板東和正】ロシアが侵攻したウクライナでの人権侵害状況を調査する国連人権理事会(本部・ジュネーブ)の調査委員会が16日、報告書を公表した。露当局が、拷問や強姦、子供の連れ去りなどをウクライナの多くの地域やロシア国内で行ったと指摘。その行為の多くが「戦争犯罪に相当する」と認定した。
報告書は、ウクライナ国内の現地調査や500人以上の男女の証言などに基づいて作成された。報告書は来週、人権理に提出され、質疑が予定されている。
報告書は、露当局がウクライナの民間人や軍人らに対して、激しい殴打や電気ショックを与えるなどの拷問を行ったと指摘。露当局に拘束されたウクライナ人が「ウクライナ語を話したことに対する罰」として拷問を受けた例もあげた。
報告書は、ロシアによる拷問は「組織的かつ(ウクライナの)広範囲」で行われたとした。露軍の兵士がウクライナの民間人の家に押し入り、強姦を行った事例も紹介。家族が兵士らにレイプされる様子を見ることを強いられた民間人もいたという。
また、報告書は、昨年10月以降にロシアがウクライナのエネルギー施設を標的に繰り返してきた攻撃について、拷問などとともに「人道に対する罪」に相当する可能性があるとの見解を示した。
ロイター通信によると、調査委のエリック・モーゼ委員長は16日、「(ウクライナ侵攻は)さまざまなレベルで壊滅的な影響を及ぼしている」と分析。ウクライナの民間人の命が「軽視されていることは衝撃的だ」と危機感を示した。
調査委は昨年9月にも活動経過を報告し「ウクライナで戦争犯罪が起きたとの結論に達した」と指摘していた。