故郷の入り口には堅牢(けんろう)なゲートが設置され、事前申請をして、警備員に通行許可証を見せなければ通過できない。すれ違う人はない。主(あるじ)を失った田や畑は雑草が冬枯れの姿をさらしていた。変わらないのは小さい頃にウグイを捕った小川の流れだけだった。
全域が避難指示区域になった福島県浪江町。徐々に整備が進み、複数の地域で避難指示が解除されたが、町の面積の約8割にも上る地域で帰還時期が見通せていない。先行きへの不安から、帰還整備の対象外となった地区では帰還に消極的な空気も漂う。地区で変わりゆく故郷をつなぎとめようと模索する住民がいる。
「ここに住んでいたんだなあ」