16日の日韓首脳会談は、停滞が続いた防衛協力の改善の成否が大きな焦点となる。核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動向などを背景に、途絶えていた「日韓安全保障対話」の再開などが確認される見通しで、連携強化へとかじを切る転機となる可能性がある。一方で、韓国海軍による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射などの問題は積み残されており、うやむやなまま決着を急げば信頼関係を醸成する上でしこりを残しかねない。
日韓の防衛協力は近年、深刻な冷え込みが続いていた。2018年12月のレーダー照射問題を機に対立が深まり、19年8月には、日本政府が半導体材料の対韓輸出管理を厳格化したことへの対抗措置として、韓国が一時、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告した。
しかし、韓国側が今年3月、いわゆる徴用工訴訟問題を巡る解決策を発表したことを受け、日本側では「潮目が変わった」(防衛省幹部)との受け止め方が広がっている。首脳会談では、GSOMIAの正常化や、北朝鮮の弾道ミサイルの探知・追尾情報を日米韓でリアルタイムで共有する仕組みの構築などが議題になる可能性がある。
「海自と韓国海軍の過去の問題をしっかりと整理し関係修復へと歩みを進めていく。機は熟している」
海自トップの酒井良海上幕僚長は14日の記者会見でこう述べた。懸案と位置づけてきたレーダー照射問題、韓国による自衛艦旗(旭日旗)の不当な排斥という2つの問題に関しては「あいまいにすると禍根を残す」と強調したものの、「2つの問題が明確にされない限りは防衛交流を推進する状況ではない」という従来の説明に比べ、大幅にトーンを弱めた。
浜田靖一防衛相は9日の衆院安全保障委員会で、レーダー照射問題に関し「再発防止を含めた懸案解決のため、韓国側と緊密に意思疎通を図りたい」と表明した。ただ、韓国側は照射の事実を認めておらず、「再発防止」を模索する前提すらないのが実相だ。海自関係者は「未解決のまま前へ進んで、有事の際に真に協力し合える間柄になれるのか」と懸念を口にした。(松本学)