【ソウル=時吉達也】韓国大統領府の金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長は14日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の16~17日の訪日日程を発表。岸田文雄首相との首脳会談に加え、尹氏が大学生に向け講演することなどを明らかにし「韓日関係改善の重要な道標になる」と期待を示した。一方、韓国国内ではいわゆる徴用工訴訟問題をめぐる政府の対応に反発が強く、対日政策への賛否は二分している。
「韓日関係が『正常化』の段階に突入したことをアピールする」。金氏は記者団に、今回の大統領訪日の意義をこう強調した。大統領府関係者は、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の運用正常化についても「韓日関係が改善されれば自然に解決される」と述べ、安全保障分野の協議進展にも意欲を示した。
韓国の世論調査会社、リアルメーターの13日の発表では、大統領支持率は前週比で4ポイント下落し、38・9%。6日に公表した徴用工問題の解決策公表が影響し、約1カ月ぶりに40%を下回った。大統領府は「この程度は甘んじて受け入れる」(関係者)として「想定内」との認識を示しており、今後は訪日での「成果」を強調し世論の理解を広げる構えだ。
しかし、国政運営をめぐる与野党対立もからみ、対日政策に対する保革両陣営の評価は乖離(かいり)する一方となっている。13日にはソウル中心部で同時間帯に別々の討論会が開催され、ソウル大の教授も分かれて出席。参加者の一人は「両陣営の交流がないため、対立を解消する動きにならない」とため息を漏らした。
徴用工訴訟で勝訴が確定した原告のうち存命中の3人は13日、賠償金を韓国政府傘下の財団が支払うとする韓国政府の解決策について、拒否する立場を正式に表明した。代理人弁護士が財団に書面で伝えた。