中国軍関係者がウクライナでの戦争の研究に力を入れている。米欧の新鋭兵器が大量投入されており、台湾海峡危機で西側諸国と衝突した場合などに備え、脅威となる兵器や通信網に対抗する手段を探る狙いがあるとみられる。中国側はウクライナ軍が駆使した米スペースXの衛星通信システム「スターリンク」や歩兵携行式ミサイルを警戒。スターリンクを無力化する能力が必要だとするなど「教訓」を得ようとしている。
「スターリンク無力化の手法の発見が急務だ」
ロイター通信によると中国軍系の研究者は、低軌道衛星を使ったスターリンクの機能を阻害する能力が必要だと主張している。
同通信がロシアのウクライナ侵攻を研究した中国軍事研究者の約百本の論文を分析。複数の論文がスターリンクの脅威をとり上げたという。
ウクライナ軍は露軍のミサイル攻撃でインフラが破壊されても、スターリンクで通信網を維持。露軍の戦車の位置などを把握し、攻撃に役立てたとされる。
昨年9月に中国人民解放軍陸軍工程大学の研究者が出した論文は、スターリンクについて、アジアでの武力衝突の際に「米国が広範囲に使用するのを確実に促す」と指摘した。
一方、昨年10月の国家国防科技工業局機関誌の論文は、米軍の携行式ミサイルのスティンガーやジャベリンが露軍に深刻な損害を与えたとし、「中国は軍事装備を防御する能力を改善すべきだ」と強調した。
中国軍の機関紙、解放軍報(電子版)は1月の記事で、「(露軍は)統合作戦能力が不十分で、伝統的戦法にとどまっている」と分析した。近年、主要な戦闘経験がない中国軍は米軍と実力差があるとされ、露軍の苦戦ぶりに危機感を強めているとの見方がある。
中国政府が5日に公表した政府活動報告は、「実戦的な訓練に力を入れる」と強調した。国防費の伸び率は経済成長目標を大幅に上回る前年比7・2%増となっており、露軍とウクライナ軍の戦闘から得た教訓も参考に戦力を増強する可能性が高い。(桑村朋)