原発処理水放出、島嶼国に理解じわり 中露韓は反発強く

政府が春以降の開始を見込む東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、中国やロシア、韓国は安全性への懸念を示し、なお反発を続けている。政府は科学的根拠に基づく安全性を各国に訴え、太平洋の島嶼(とうしょ)国では理解が広がりつつある。今後も風評被害を払拭するため国際機関と連携しながら説明を続ける考えだ。

「ミクロネシア連邦が以前に国連総会で述べたほどの恐れや懸念はもはや有していない」

岸田文雄首相は2月2日、官邸で同国のパニュエロ大統領と会談し、共同声明にこう明記した。パニュエロ氏は昨年9月の国連総会で、処理水放出の計画に「最も深刻な懸念」を表明したが、その方針を転換した。

政府は令和3年4月、2年後をめどに処理水の海洋放出に着手する方針を決定した。国際原子力機関(IAEA)による検証や各国への説明を重ね、安全性や透明性の確保を図ってきた。方針を変えたミクロネシア連邦は、現地の日本大使館による相手国の首脳らへの直接的な働きかけが奏功したケースとなった。

しかし、同国を含む地域協力機構「太平洋諸島フォーラム」(PIF)は「一枚岩ではない」(外務省関係者)という。処理水を「核汚染水」と呼んで対日批判を続ける中国が影響力の拡大を図るなど、処理水を巡る懸念は根強い。

中露は歩調を合わせて日本への懸念を積極的に発信している。中国の秦剛外相は3月7日の記者会見で、「海洋環境と人類の健康に関わる」と強調。2月14日の国連安全保障理事会の公開会合では、ポリャンスキー露国連次席大使が「日本は近隣国と十分な議論をしなかった」と批判した。

昨年には、中露両政府が連名で「核汚染水」との文言を掲げた日本政府への共同質問状をIAEAを通じて公表し、日本政府が中露の「事実に関する誤解」を指摘した上で回答した。

韓国では今年2月、政府系研究機関が日本の計画通り処理水が放出された場合でも、韓国周辺海域のトリチウムの濃度は人体に影響ない水準にとどまるとの分析を公表した。ところが、韓国政府は日本の対応を問題視する姿勢を崩さない。

「汚染水」との偽情報が拡散し続ければ、漁業者など日本の事業者への風評被害が深刻化する恐れがある。政府関係者は「粘り強く説明するしかない。IAEAとの連携などを今後も続ける」と話している。(岡田美月)

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