共産党の機関紙『しんぶん赤旗』は10日付で、著書などで党首公選制導入などを訴えて除名処分となったジャーナリストの松竹伸幸氏のインタビュー記事を掲載した長崎新聞社(長崎市)に対し、党長崎県委員会幹部が抗議したとの記事を掲載した。
同日の田村智子政策委員長の記者会見では、「言論を萎縮させる」などの指摘が相次いだ。田村氏は「党中央として『何かやれ』ということではなく、現地が対応した」と党本部の関与を否定。その上で「党運営について一方的な立場での報道が繰り返されているのは事実であって、そのことへの対応が行われたということだろう」との見解も示した。
田村氏との質疑応答の概要は次の通り。
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「参院では連日、いろいろな場で(放送法の「政治的公正」に関する行政文書をめぐる問題について)質疑になっている。(当事者の一人である高市早苗経済安全保障担当相の答弁は)本当に事の重大性を理解していない発言だと指摘しなければならない」
--長崎新聞に党長崎県委が抗議した。党本部も同じ見解か
「現地で対応したことで、私は事態を承知していない。事実に反するような報道があった場合は事実に基づいて、わが党が色々な問題を新聞社に対してもモノを言うということは当然、あるだろう」
「この間、党首選を行わないことが『異論を封じている』とか、『民主的な党運営ではない』という一方的な決めつけが行われているので、『それは事実ではない』ということを私たちは丁寧に、赤旗も通じて皆さんにお伝えしてきた。そのことを踏まえない報道であるならば、現地としてはそういう対応をとるということはあるのではないかなと思う」
--一般論だが、「事実」というのはあらゆる見方があって、立ち位置によって変わる。一つの視座しか許さないように聞こえる
「共産党が異論を封じているということは事実ではない。これは立ち位置の関係ではなくて、異論を封じるようなことは党の運営上、行っていないので、事実ではないということだ。ここが一番大切なところだと考える」
「党首選についても、民主的な手続きを踏んで行っているということを繰り返し説明してきている。私たちは『こういうふうに政治を変えるんだ』という同じ綱領の土台の上に立って党の中で議論をし、次の方針を出すということを行っている。その過程において異論を封じるということは行っていない。『非民主的』というのはわが党としては『違うでしょ』という見解を丁寧に示してきた。ルールに基づかないということがあれば、ルールに基づいて対応するということも示してきた」
--(社説で党の対応を批判した新聞社への抗議は)少し理解できるが、(一個人である)松竹氏の言論の自由をどう考えるのか
「そのインタビュー記事について、別に何も申し上げていない」
--ただ、赤旗に記事が載っている。公党がやることではない
「言論の自由はもちろん保障されなければならない。その時に私たちの党について述べられたことについては、私たちの見解もしっかり見て報道していただきたいということは政党として当然の要求だと思う。この間のメディアの報道がなかなかそうなっていない。一方の側だけの報道が一方的に行われている」
--相手は個人だ。やり過ぎだ
「『言論には言論で』という対応でやっている。しかし、『党首公選制をしていない共産党は問題だ』ということのみでの報道がずっとやられている。私たちの主張を報道して欲しい」
--ある個人が言ったことをストレートに報じたりすることは言論の自由だ
「この間、一つ一つのそういう記事について、地方紙でいろいろと載っていることについて、例えばこういう会見の場で『けしからん』とか言っていない。それはやっていない。大手の、全国紙の社説に出たときには『事実と違います』ということで、会見でも問われて言った」
「一方的な報道が共産党に対して行われているということについて、私たちについて言われていることだからこそ、共産党にとってもちゃんと示す必要があるわけだ。そういう報道をしてほしいと求めることは、政党としてはある意味、当然ではないかと思う」
--例えば赤旗に自民を批判する個人のインタビュー記事が載ったとして誰も何も思わない。「そういう見方もあるのかな」という程度だ。長崎新聞をめぐる対応は、これこそ言論を萎縮させるのではないか
「私たちの側からもいろいろと情報を提供して、起きている問題についてさまざまに説明も行ってきている中で、一方的に松竹氏のみのインタビューを行ったということで現地が対応したと思うが、私は(そうした対応をするに至った)議論に加わったりなどはしていない。中央として『何かやれ』ということではなく、現地が対応した」
「ただ、全体としては今、言ったとおりだ。ずっとこの問題は、私たちの方から発信はしているが、ほとんど無視されている状態に見える。一方で、共産党の運営について一方的な立場での報道が繰り返されているというのは事実であって、そのことに対する党の対応が行われたということだろうなと思う」
--確認だが松竹氏のインタビューを載せた新聞社に対し、党として抗議をすることは考えていない?
「この間、個々のところで党の中央委員会はそういう対応をしていないですよね? 地方の新聞でいろいろと書かれていることについて、私たちが会見の場で述べるというようなことはやっていないわけですよね?」
「長崎の件については詳細を把握していないので、これ以上の質問は答えるのが難しい。これまで私たちが述べてきたにもかかわらず、一方の側の報道だけが続いている。一方の側のインタビューとかが行われているという事実について、党として見解をちゃんと述べなければいけないし、知らせなければいけないという対応をしているというのが基本だ」
--「一方の側」と言うが、全体の報道を見れば、党側が処分した理由、「分派活動があった」などとわれわれは書いてきている
「私たちがそういう対応をしたことについて、疑問があったり、問題があったりということなのか?私たちの説明では納得がいかないということなのか?党のルールに従わず、共産党の綱領をいわば否定し、ルールに基づかないやり方で出版をしたことについて、私たちがまさに党のルールに基づいての処分をしたということを…。それが間違っていると言われてしまうと、党のまさに、自らの運営、自立的な運営について、「それはおかしい」という世論を外につくるということになっていってしまう」
--個人にかかわることは、もう少し寛容であるべきではないか。松竹氏にインタビューをしたらすぐに共産党から抗議がくるという状況をつくることをしてはダメではないか
「現に(松竹氏が)記者会見をやったりしても記者クラブに抗議なんかしていない」
--そうでしょ? (松竹氏の著書を出版した)文芸春秋社に抗議に行っていないんでしょ? ならばなぜ(今回は抗議をする)必要があるのか。赤旗に『抗議しました』とやられたら萎縮してしまう
「先ほど申し上げた通り、長崎の案件については詳細に議論に関わっていない。記者会見が行われたことに抗議なんかしていない。(新聞社の社説への反論も)問われて答えているという対応をしている。私たちは私たちとして党のルールや、党の運営の問題を丁寧に赤旗などを通じてお返しをしているというのが事実だ」