WBCも「ネット視聴」が主流になるか ライブ配信するアマゾン・プライム・ビデオの狙い

WBCでのライブ配信で、解説を務める元ロッテの里崎智也氏(中央)ら
WBCでのライブ配信で、解説を務める元ロッテの里崎智也氏(中央)ら

野球の国・地域別対抗戦の第5回「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)で、9日に初戦の中国戦を迎える日本代表「侍ジャパン」。6日にテレビ朝日系で放送された強化試合の阪神戦での視聴率が20・2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)をマークするなど3大会ぶりの優勝への期待が高まる中、Amazon(アマゾン)が展開する定額制の動画配信サービス「Prime Video(プライム・ビデオ)」が日本戦全試合をライブ配信することになった。昨年行われたサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会ではインターネットテレビ「ABEMA」によるライブ配信が話題を呼んだが、WBCでもネット視聴によるライブ配信が注目されそうだ。

スポーツのライブ配信は「成長の柱」

プライム・ビデオは、日本国内では2015年からサービスを開始。現在は240以上の国・地域に拡大している。18年からはアニメなどが視聴できる「プライム・ビデオ・チャンネル」もスタートし、国内では現在63チャンネルが視聴できる。

今回のライブ配信ではパソコンやスマートフォン、タブレットなど、さまざまな端末からWBCを視聴することが可能。プライム・ビデオでは、4日、7日に行われた強化試合でもライブ配信を行った。また、プライム・ビデオ・チャンネル内の「J SPORTS」(別途登録が必要)とあわせると、大会期間中の全試合のライブ視聴が可能になるという。

プライム・ビデオでは昨年、プロボクシングの村田諒太対ゴロフキン戦を皮切りに、スポーツのライブ配信を本格的にスタートさせた。プライム・ビデオでジャパンカントリーマネージャーを務める児玉隆志氏は、「スポーツのライブ配信は、世界各国のプライム・ビデオの事業において成長の柱と考えられている」とした上で、「ボクシング(のライブ配信)がきっかけでプライム・ビデオの会員になったお客さまは、これまでの映画やドラマ、アニメなどを目的に会員になったお客さまとは視聴傾向が異なるという調査結果が出ており、スポーツのライブ配信によって新しい顧客層を開拓できたことが分かった」と説明する。

中国戦では王貞治氏が解説に登場

サッカーW杯カタール大会でのABEMAによるライブ配信では、元日本代表の本田圭佑選手による個性的な解説が話題を呼んだ。プライム・ビデオによるライブ配信では、元日本代表監督の稲葉篤紀氏、元ロッテの里崎智也氏、大リーグや中日、阪神でプレーした福留孝介氏らWBCに出場経験のある元プロ野球選手が解説を担当。9日の中国戦では、第1回大会で指揮を執った元代表監督の王貞治氏も解説陣に加わる。

今回の侍ジャパンは大谷翔平選手(エンゼルス)やダルビッシュ有投手(パドレス)ら複数の大リーガーも参加。米国メディアでも優勝候補の一角に挙げられており、過去の大会と比較しても注目度は高い。

サッカーW杯カタール大会でのライブ配信ではアクセスが集中し、ABEMAでは「入場制限」する措置を取った。WBCでもアクセスの集中が予想される日本戦での通信環境について、プライム・ビデオでは「サーバーを強化し、想定している視聴数の倍以上のキャパシティーを用意して、万全の態勢で臨む」(児玉氏)という。

また、WBCでのライブ配信にあわせ、見逃した箇所に合わせてAI(人工知能)がハイライト動画を作成する「これまでのハイライト機能」(アイフォーン、アイパッドは非対応)を整備。また、侍ジャパンの注目選手にフォーカスした視点で視聴することができる「マルチアングルカメラ機能」(アイフォーン、アイパッドは今月中旬ごろに対応予定)も利用することができる。

児玉氏は「今回、WBCを配信することで、既存のお客さまに喜んでいただくことはもちろん、ボクシングのファン層とも異なる新しいお客さまにリーチすることができると考えている」としている。(浅野英介)

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