SNSを通じたコミュニケーションが日常となり、誰もが発信者となった今日。新たなインターネットの形Web3時代の到来が、迫っている。これまで特定企業のツールを通じて行われていた通信を、個人間で行うことで、セキュリティの向上や国境などの制限からの解放が期待できる。教育の観点からいえば、今まで以上に自身が興味のある分野にアクセスしやすくなるため、学生の興味・関心もよりフレキシブルになることが予想される。
千葉工業大学では、それらを後押しするための、技術的プラットフォームや文化的アウトプット構築の場「変革センター(Center for Radical Transformation: CRT)」を開設。国境を越えた人材の流動性を見据え、偽造不可な鑑定書NFTによる学修歴証明の発行もすでに開始している。デジタルデータの証明書には、どんなメリットがあるのだろうか。
学術分野・業界を超えた研究の起点に 変革センター
予想されるWeb3時代の到来はもちろん、コロナ禍や科学と技術の進歩によっても、すでに私たちの生活は日々大きく変化している。そんな複雑化・細分化した世界のシステムへの対応について、学術分野をはじめとした既存の専門性に偏らない研究が必要だと提唱するのが、千葉工業大学の変革センターだ。特に日本では、社会的・政治的変化を遂げるためには、理系・文系の分類や業界の壁を取り払う必要があるとして、社会をよりよくするための知識・技術を生み出すべく研究を進めている。
同センター長を務めるのは、マサチューセッツ工科大学に設置されているMITメディアラボの元所長である伊藤穰一氏。そのほか、メディア美学、法学などの数多くの専門家が参加している。
変革センターの取り組み第一弾となるのが、所有証明書付きデジタルデータNFTによる、学修歴証明書の発行だ。Web3時代の到来がもたらす変化の一つは、国境などに制限されない通信。つまり、学生は興味・関心に基づく就労の場をより広範囲で選ぶことができるようになり、雇用側もまた国境を越えて、事業に貢献できる特定の知識や技能を持った学生を採用する機会が増えていく。国際規格に基づいたデジタル証明書は、学生の幅広いキャリア形成を後押しするものとなる。
偽造不可能でプライバシーも保護するデジタル履歴書
NFT学修歴証明書のポイントは3つ。まず、偽造が不可能であること。証明書は暗号化技術に基づいたデータベース上で発行される上、個人情報データの世界基準規格に基づいて作成される。改ざんされていない「完全性」と、発行元が信頼できる「真正性」の二つを兼ね備えているため、世界各地で活用できるというわけだ。
次に、さまざまなプラットフォームへの接続が簡単であること。NFTマーケットやオンラインチャットサービス、就活サイトなど、媒体を超えて証明に使うことができ、就業機会の増加を期待できる。また、証明書は仮想通貨のウォレットで管理できるため、取り寄せたり都度発行したりといった手間もかからず、自身の学びのアピールにタイムロスが生じない。
そして、情報の公開範囲を柔軟に変えられること。証明書は世界各地で活用することができるものの、かえってプライバシーを侵害する可能性がある。そこで、NFT学修歴証明書では、学位のみすぐに確認ができ、成績情報や単位などの詳細な内容は雇用側が照会するときに閲覧できるようになっている。これは証明書が発行されているデータベース外に、詳細情報を保存する独自の設計によって実現されている。
Web3時代の就職を後押しするツールに
年々変化する、就職活動の方法やキャリアの在り方。Web3時代には、特に大きな変革が起こると考えられており、学生の学修歴を通じて世界中から人材を獲得する動きがみられるようになるだろう。技術職やエンジニア職の市場価値も高まることが予想されるため、同校の学生にとっては、NFT学修歴証明書はより良い将来をつかみ取るための貴重なツールとなる。
もちろん、役立つのは新卒時点だけではない。情報は、半永久的にデータベース上に残されるため、中長期のキャリア形成にも役立てることができる。
今後、インターンシップでの経験なども記録できるようになるなど、ますます進化していくことが予想されるNFT学修歴証明書。変革センターでは、今後も先進的なシステムを生み出しながら、学生支援を充実させていく。
提供:千葉工業大学