林外相のG20欠席 与野党が責任押しつけ

参院予算委で答弁のため挙手する林芳正外相=2日午前、参院第1委員会室(矢島康弘撮影)
参院予算委で答弁のため挙手する林芳正外相=2日午前、参院第1委員会室(矢島康弘撮影)

2日の参院予算委員会は、林芳正外相が同委への出席のためインドでの20カ国・地域(G20)外相会合を欠席した問題が尾を引く展開となった。岸田文雄首相は林氏の派遣を模索したものの、国会日程のため見送る判断となったと説明した。一方、国益を損なう事態を招いたことに与野党などが責任を押し付け合う泥仕合も始まっている。

「一つ苦言を呈したい。それは、昨日(1日)と今日(2日)、林氏がこの場に座っていることだ」

日本維新の会の音喜多駿氏は、質疑の冒頭にこう切り出し、林氏が国会を優先し、G20会合の欠席に至った経緯を疑問視した。

首相は「林氏の出席の可能性を追求したが、国会を含む日程などを総合的に勘案した」と説明したが、音喜多氏は「納得できるものではない」と突き放した。さらに、前日の1日の審議で林氏への与野党の質問がわずか1問、53秒だったことにも言及し「林氏の無駄遣いだったと言わざるを得ない」と指摘。「『外交の岸田』らしく国益を優先する判断をしていくべきだ」と注文をつけた。

ただ、そもそも林氏のG20会合出席に待ったをかけたのは国会側だ。

2日の参院予算委理事会では、立憲民主党が「G20については外務省から話を一切聞いていなかった」と外務省の失態を指摘した。実際、外務省の日程調整の動きが鈍かったことは否めず、政府高官は「もっと日程調整すべきだった」と悔やむ。

だが、国会側も「基本的質疑は首相出席のもと全閣僚出席で行うことが原則だ」(自民党の野上浩太郎参院国対委員長)との主張が大勢だった。与野党とも林氏のG20会合出席に積極的に協力した形跡はない。

閣僚の海外出張を巡っては、昨年2月にも鈴木俊一財務相がG20財務相・中央銀行総裁会議への出席を国会日程のため見合わせており、同様の失態を繰り返したことになる。

自民の麻生太郎副総裁は2日の麻生派(志公会)会合で「(林氏が)出られなくなったのはどうかね。国会論議が理由でというのは、どういう反響があるのか考えないといけない」と苦言を呈した。

首相は同日の予算委で「国会の理解を得つつ、積極的な外交を展開したい」と語ったが、国会が「慣例主義」を見直さなければ、外交よりも国内事情が優先の「ガラパゴス国会」の返上は容易ではない。(永原慎吾)

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