<特報>「顔パンツ」外すのに抵抗も 晴れ舞台の卒業式に「初めて見る顔ばかりで新鮮」 

校長の式辞を聞く卒業生ら。多くがマスクを外して式典に臨んだ=28日午前、大阪市天王寺区の府立清水谷高校(甘利慈撮影)
校長の式辞を聞く卒業生ら。多くがマスクを外して式典に臨んだ=28日午前、大阪市天王寺区の府立清水谷高校(甘利慈撮影)

各地の学校は3月に入り、本格的な卒業式シーズンを迎える。文部科学省は生徒や教職員の式でのマスクに関し「着用なしが基本」と通知したが、すでに式を挙行した学校ではマスク姿のままの関係者も目立った。3月13日以降、マスクの着脱は「個人の判断」に移行するが、9割が引き続き着用の意向を示したとの調査結果もある。3年近く続いた新型コロナウイルス禍で着用習慣はすっかり定着し、諸外国と同等の本格的な脱マスクにはまだ時間がかかりそうだ。

2月28日、大阪府立清水谷高校(大阪市天王寺区)であった卒業式。式典開始時には約8割の生徒がマスクを外して入場したが、全員が着用をしたままのクラスや、着席後にマスクを取り出した生徒もいた。

答辞を述べた平家志津乃さん(17)は終始マスクを外さなかった一人。「今更(マスクを)外して印象が変わるのに抵抗があった」という。マスクを外していた小西桜子さん(18)は「初めて見るような顔ばかりで新鮮だった」と話した。

文科省は2月10日、全国の教育委員会に「卒業式は着用しないのが基本」と通知した。判断に迷わないよう、あえて明確な内容にしたという。

多くの学校は、生徒らが素顔で晴れ舞台に立てるよう模索しているが、悩みが尽きないのも事実。清水谷高では受験前の生徒などへの配慮から、最終的なマスク着脱の判断は生徒に委ねた。生活の一部となったマスクを外すのに抵抗を感じる生徒もいる。日笠賢校長は「マスクは『顔のパンツ』になってしまっているということもあるのでは」と心情をおもんぱかった。

政府は5月、コロナの感染症法上の位置づけを危険度の高い「2類」相当から、季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げる。これに先立ち、マスク着用も3月13日以降は個人の判断に委ねられるが、心理的なハードルの高さを指摘する向きもある。

キャリアや転職に特化したサービス「Job総研」を運営するライボ(東京)は2月上旬、コロナの5類引き下げを受け、社会人561人に脱マスクへの賛否を尋ねた。それによると65・6%がマスクを外す行為に賛意を示した一方、3月13日以降に関しては「状況に応じて使い分ける」を含め、94・5%が継続して着用する考えを示した。

理由については「感染対策」(53・4%)が最多だったが、「習慣化している」(50・2%)との声も半数を超えた。大半の人がマスク着脱の自由化を歓迎しながらも、脱マスクに至るにはしばらく時間が必要といえる結果となった。

ライボの担当者は「長引いたコロナ禍の影響でコロナ前の日常は過去のものという認識になりつつある。マスクは(3月13日以降も)現状の着用状況から大きく変化しないのではないか」としている。(木ノ下めぐみ)

マスク外して笑顔 卒業式シーズン到来

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