大阪知事選、参政党出馬で波紋 統一選後を見据えた戦略とは

昨年の参院選で国政進出を果たした参政党が、3月23日の告示まで1カ月を切った大阪府知事選(4月9日投開票)に候補者を擁立すると発表し、波紋を広げている。地域政党「大阪維新の会」のお膝元で、現職優位とされる選挙に参戦する狙いは何か。取材すると、今回の統一地方選の先に照準を定めた戦略が見えてきた。

今月24日、大阪城(大阪市中央区)近くのビルの1室。党カラーのオレンジ色のネクタイを締めて記者会見した参政の神谷宗幣(そうへい)副代表は、歯科医の吉野敏明氏(55)を知事選の公認候補として擁立すると発表した。

大阪では維新が平成23年以降、3回の知事選でいずれも200万票以上を獲得して勝利している。維新の牙城ともいえる地で戦う理由を問われた神谷氏はこう答えた。

「維新の時代が長い。ノーを言いたい人はたくさんいるが、今の自民党は解決策にならない。維新も自民もダメという思いの受け皿になりたい」

参政は結党後初めて挑んだ昨年7月の参院選で、①子供の教育②食と健康、環境保全③国のまもり―を重点政策とし、「国や地域、伝統を大切に思える自尊史観の教育」「外国人参政権を認めない」などの公約で保守色を打ち出した。知事選で特にターゲットとするのは、非維新系保守層だ。

知事選への立候補を表明しているのは、現職で維新代表の吉村洋文氏(47)▽共産党が推薦する元参院議員の辰巳孝太郎氏(46)▽政治団体「アップデートおおさか」が擁立する法学者の谷口真由美氏(47)-の3人。

23年以降の知事選で、非維新系候補を支援してきた自民大阪府連は今回、独自候補を擁立せず、谷口氏への自主支援を決めた。参政の候補者擁立の背景には、非維新勢力の結集に際して主導権を握ることができない自民の隙を突く思惑があるとみられる。

ただ昨年7月の参院選の結果をみると、参政の比例代表の総得票数176万8385票のうち、都道府県別で大阪(11万6189票)は東京(21万2132票)、神奈川(13万3704票)に次ぐ3番目。大阪での得票数は日本維新の会(145万1516票)の1割に満たず、自民(73万9292票)にも大きく差をつけられている。

こうした厳しい状況で攻勢に出る狙いについて、神谷氏は自身が元大阪府吹田市議であることを念頭に「地縁があり、知り合いも多い。関西全域に支持を広げるためにも大阪が好ましい」と説明する。大阪府知事選は同じ日に投開票される神奈川県知事選と比べ、メディアの露出度が高いことも理由に挙げた。

参政は統一選で、府内の中核市などの市議選候補として15人を公認。近く新たに1人を公認する予定だ。ある選挙コンサルタントは「知事選に候補者を出すことで有権者に党名を周知でき、市議選で当選させれば次期衆院選、特に比例代表で議席をうかがうための橋頭保(きょうとうほ)になる。統一選はその下地作りだろう」と話す。

参政の動きを他陣営はどうみるか。吉村氏は24日、記者団に「どなたが立候補しても、自分がやってきたこと、これから目指す大阪像を打ち出して判断を仰ぎたい」と話した。反維新の票が割れる可能性もある中、アップデートおおさかの小西禎一(ただかず)事務局長は「複数の選択肢がある方がよい選挙になる」としている。

自民府連関係者は「自民票以上に維新票が奪われるのではないか。うちは維新と戦うことで手いっぱい。参政のことまで気にする余裕はない」と冷めた様子で語った。

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