特別なカラーリングが施されたマクラーレン「GT」に小川フミオが試乗した。自分好みのマクラーレンを作り上げられる“MSO(マクラーレンスペシャルオペレーションズ)”とは?
個性を際立たせるアート
マクラーレン・オートモーティブが2022年11月に発表した「GT」のアートカーは、かなり特別な1台だ。
なにしろ、マクラーレンGTのボディを飾るのは、国内外で活躍するグラフィックアーテ ィスト、YOSHIROTTEN(ヨシロットン)のアートワーク。
「さまざまな光の中を駆け巡るように東京の街を走りだすマクラーレンGT。そこに映る直線的な光のラインはそのボディに溶け込み、美しいフォルムと融合している」とはプレスリリースの文言。
YOSHIROTTENは、グラフィック、映像、立体、インスタ レーション、音楽など、ジャンルを超えた様々な表現方法での作品制作を行う。
456kW(620ps)の最高出力をもつ4.0リッターV8ガソリンターボ・エンジンをミドシップしたGTのボディにぐるりと、多色づかいの帯がまわされている。
GTというと、キャビン背後、ボディ側面左右に設けられた巨大なエアインテークが目をひくボディデザイン。今回のアートワークはまったく違和感なく、個性を際立たせている。
ダークな地色に、多色の帯は、最初見たときは虹か? と、思ったが、じっさいの意図は「街の光と捉えることも、夕暮れや朝の空色と捉えることもできるもの」と、作者は説明している。
街の電飾のようでもあり「暗くなってから車体を眺めると、かなりきれいです」と、マクラーレン・オートモーティブの広報担当者は教えてくれた。
誰でも注文出来ます
このプロジェクトは、日本に仕事場を持つYOSHIROTTENと、英国でオーナーの要望に沿ったカスタマイズなどを手がけるMSO(マクラーレンスペシャルオペレーションズ)の担当者がオンラインで打ち合わせをしながら、最終的な仕上げまでもっていったそう。
アートカーというと、まず浮かぶのは、BMWだ。1970年代にフランク・ステラやアレクサンダー・コルダーにボディペイントを依頼した「3.0CSL」や、アンディ・ウォーホルが手掛けた「M1」など、数多くの“作品”を作っている。ルノーも、1980年代に、「サンク」を使ってアレッサンドロ・メンディーニら工業デザイナーを中心に、ボディペイントを特別に依頼したことがある。
今回のマクラーレンの場合、作品でなく、誰もが注文できるプロダクトというのが、上記のBMWなどと大きく異なる。
マクラーレンにはMSOという部門がある。「究極のカスタマイズを実現する」と、役割を定義。