詐欺組織を強盗転用 送還の4人 勧誘、金庫番など役割分担

全国で相次ぐ強盗事件を巡り、フィリピンの入管施設に収容されていた渡辺優樹容疑者(38)ら2人が9日、強制送還されたことで、指示役とみられる4人全員が帰国。4人は特殊詐欺も敢行し、それぞれが役割を分担してグループを統括していた実態も浮かんできており、警視庁は、その手法を強盗にも用いたとみて調べを進める。

捜査関係者によると、グループのリーダー格は渡辺容疑者で、藤田聖也(としや)容疑者(38)は末端の実行役を集める「リクルーター」だったという。藤田容疑者は交流サイト(SNS)で高収入をちらつかせ、若者らの興味をひきつけてグループに引き込んでいたとみられている。

その際、免許証の画像などを送信させ、個人情報を握って脱退を防ぐように工作。高齢者宅などに電話を掛ける「かけ子」や住宅を訪れて現金などを受け取る「受け子」として犯行を重ねさせていたとされる。

その「かけ子」に具体的手口を指導するといった実行役を束ねていたのが今村磨人(きよと)容疑者(38)だった。フィリピン当局が2019(令和元)年11月に4人のマニラ近郊の廃ホテルの特殊詐欺拠点を摘発したが、その際に拘束されたかけ子36人は「缶詰生活」を強いられ、集中的に電話をかけさせられていた。

詐取した金の大半は航空機で4人のいるフィリピンに運ばれていたとみられている。捜査関係者や裁判記録から、渡辺容疑者と交際していた女性が平成31年4月に日本から手荷物の中に現金2千万円を持ち出しフィリピンの本人に渡していたことも分かっている。女性は短期間で7回もフィリピンに渡航していた。

小島智信容疑者(45)は筆頭の幹部で、そうした詐取した現金の管理を担う、いわゆる「金庫番」だったとみられている。4人は2019年11月の拠点摘発の際には拘束を逃れていたが、19年12月~21年4月の間にフィリピン当局に拘束され、入管施設に収容された。その後、強盗に切り替えたが、特殊詐欺の手法を応用。入管職員を買収して携帯電話を入手するなどし、犯行を続けていたとみられている。(宮野佳幸、王美慧)

比拠点詐欺リーダー格の男らを逮捕 実態解明へ捜査本格化


会員限定記事会員サービス詳細