「発生72時間」を前に命をかけた救助活動続く トルコ南部ハタイ

8日、トルコ南部ハタイ県アンタキヤで倒壊した建物のそばで救助について協議する市民ら(板東和正撮影)
8日、トルコ南部ハタイ県アンタキヤで倒壊した建物のそばで救助について協議する市民ら(板東和正撮影)

トルコ南部を震源とするマグニチュード(M)7・8の大地震で、多くの市民が倒壊した建物の下敷きになったままになっている南部ハタイ県。生存率が急激に低下するとされる「発生後72時間」が9日午前4時17分(日本時間9日午前10時17分)に迫る中、市民や救助隊員らが余震の恐怖にさらされながらも生存者を探す現場を歩いた。(南部ハタイ県アンタキヤ 板東和正)

「誰かいますか?いたら声をあげてください」

ハタイ県の中心都市、アンタキヤ。倒壊した4階建てのアパートの前で市民の男性が声を張り上げては注意深く物音を聞いていた。物音が少しでもすれば、市民やボランティアに従事する人々がつるはしやハンマーでがれきを掘り起こす。「1秒も無駄にするな!」。いてつく寒さの中、掛け声をあげながらがれきをリレー方式で運び出した。

シリアとの国境に近いハタイ県は6日の地震で被害が大きかった地域の一つで、少なくとも数百人が死亡し、1200以上の建造物が倒壊した。

8日午後にアンタキヤに訪れると区画が丸ごとがれきになっている場所があり、住人のものだったとみられる衣服やアクセサリーが道路上に散乱していた。市民らは深夜になってもがれきを運び、生存者を探し続けた。崩壊した建物の周囲には「私の夫はまだ埋まっている!探して!」と泣き叫ぶ女性の姿があった。

 8日、トルコ南部ハタイ県アンタキヤで倒壊した建物の前に集まる市民ら(板東和正撮影)
8日、トルコ南部ハタイ県アンタキヤで倒壊した建物の前に集まる市民ら(板東和正撮影)

地震が発生した6日にイスタンブールから支援に来たハリル・イブラハムさん(43)は8日夜、本紙の取材に「本日はたった4人しか助けられなかった。生存率が落ちる発生後72時間が迫り、焦っている」と打ち明けた。捜索中に余震が度々起こり、救助作業を中断することも多い。捜索に当たる市民らはトイレや暖房設備もない場所で支援を続けており、「精神や体力をすり減らしながら対応している」(イブラハムさん)という。

アンタキヤに派遣された英国の消防隊員らで構成された支援チームの男性も「72時間が経過しても諦めずに捜索するが、体力の限界がある。24時間稼働はできない」と打ち明けた。

救助に当たる人員は足りていない状況で、ある市民は「がれきの中から知人の声が聞こえると周りに訴えても救助を後回しにされ、命を落とした」と涙を流した。物資も不足しており、ボランティアに従事する男性は「遺体を包むための毛布すらない」と嘆いた。

一方、命が助かった被災者も過酷な生活を強いられている。アンタキヤでは余震の恐怖から建物に入れない被災者が路上で焚火をする姿が目立った。アンタキヤは低所得者が多く、焚火をしていた被災者の女性は「別の土地に移動する資金もなく、このまま路上で生活するしかない」と話した。イブラハムさんは「(被災者を助ける)政府の支援を強化すべきだ」と強調した。

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