4月9日投開票の大阪府知事、大阪市長のダブル選に法学者の谷口真由美氏(47)と自民党市議の北野妙子氏(63)が8日、「非維新」として立候補することを表明した。記者会見の詳報は以下の通り。
《府知事選に谷口氏、市長選に北野氏を擁立したのは、政治団体「アップデートおおさか」。同団体は地域政党「大阪維新の会」代表の吉村洋文知事(47)と党創設者の松井一郎市長率いる府市が進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致について是非を問う住民投票の実施や、新型コロナウイルスの感染対策、防災対策の拡充などを求めて設立された。会見にはアップデートおおさかの代表を務めるサクラクレパス元会長の西村貞一氏らも出席した。会見冒頭、谷口、北野両氏が決意を述べた》
「インディーズのおばちゃんが、ロックスターに挑戦する」
谷口「こういう世界に足を踏み入れるつもりは全くなかったが、いろんな方の熱意に押された。大阪で生まれ育ち、シングルマザーとして子育てしている状況の中、困っている友人、ママ友、子供たちをいっぱい見てきた。大阪が1ミリでも良くなったらええなあという思いがあり、チャレンジをすることにした」
《谷口氏はさらに続ける》
谷口「私の中では維新さんになってもう10年余り。チャレンジャーっていうイメージをいつまでも出すのは、ちょっとちゃうんちゃうかな、という気がする。吉村さんは大阪ではロックスター並みの人気者。インディーズ(独立系)のおばちゃんが、ロックスターに挑戦する春にしたい」
《続いて北野氏が発言した》
北野「大阪市を居心地の良い先進都市にしたい。文化もあり、歴史もあり、伝統もある。先進的な技術を取り入れ、大胆に変革させるポテンシャルもある。住んでよし、働いてよし、訪れてよしの三方よしを実現するための手法を、トップダウンではなく、みんなで決めていく。今までオープンな議論の場はあっただろうか。情報公開を徹底し、その上で市民参加型の大阪市を作っていきたい。私自身は完全無所属でチャレンジをしたい。これは覚悟の表れ。これまでも、時には自民より市民という気持ちでやってきた。真の市民代表として、しっかりと市民と力を結集して新しい大阪を作っていきたい」
《報道各社からの質問に移った》
--IRに対するスタンスは
谷口「個人的には反対だ。だが、賛成や反対と明確なスタンスを持っている人はほとんどいない。みなさんがどう考えているかを聞き、選挙を通じて情報開示をした上で、住民が判断するものとしたい」
北野「基本的にはIRそのものには反対ではない。しかし、大阪のIRはむちゃくちゃな計画で内緒ごとが多く、問題がある。住民投票については、大阪市会でもやるべきだと提出している。情報開示して説明を行うというプロセスを経て、民主主義の最終的な手段に訴えるべきだ」
--北野氏は完全無所属とのことだが、自民党から離党するのか
北野「市民派として活動する中で、完全無所属と言い切るには党籍を置いたままでは潔くない」
--谷口氏が出馬を受けた決定的な理由は
谷口「2万%ないといってもよかったが、アップデートおおさかの諦めが悪かった。『まだ来るの』っていうくらいに、なんべん(何回)断っても来はる。(維新による)10年が何だったのかという気持ちにもなった」
--政策公約と今回の選挙の争点は
谷口「私が掲げるものは『ご機嫌さんな街大阪へ』。不機嫌さんが多い気がする。維新の10年で不機嫌になったとしたら、原因は何か。維新の10年で大阪がどうなったかを問いたい。争点はIRや教育だと認識している」
北野「コロナでデジタルトランスフォーメーション(DX)が非常に進んだ。防災やインフラ整備などに活用し、『居心地の良い先進都市』を作りたい」
--北野氏は落選した場合、政治家を引退するのか
北野「目の前のチャレンジに集中したい」
--谷口氏はIRに反対のスタンスだが、すでに出馬を表明している共産党の辰巳孝太郎氏と協力する選択肢はなかったか
谷口「ちょっと意地悪な聞き方。辰巳さんは素晴らしい政治家だと思っている。だがIRについては、賛成と反対の端境にいる人を置き去りにした論戦は民主主義の『何か』を欠いている。たくさんの選択肢がある方がいいし、二項対立を前面に出すのは違う」
「みなさんの愛で生きていこうと思っている」
《谷口氏は平成29年5月、自民の改憲草案について、評論家らとの対談形式で出版された「お笑い自民党改憲案」(金曜日)で、「政権与党である自民党が稚拙なアホみたいな改憲草案をたたき台にするとは」と批判した。その後、岸田文雄政権が誕生した際にも週刊誌のインタビューで「岸田さんは本当は何がやりたいのか見えてこない」などと語っており、これらを踏まえ谷口氏に次のような質問がなされた》
--谷口氏はこれまで安倍政権などに批判的な立場だったが、自民からの支援は望むか
谷口「私は民主党政権の時も批判している。権力はウオッチされるもので、それが何政権でも、あかんものはあかん。自民、立憲、共産だから悪いという問題ではない。賛同していただけるのであれば、どなたにでも応援していただきたい。全部取り込みたいくらい。欲張りボディーだから、分かっていただけると思う。隣にいる北野さんは自民党だが、都構想は反対だったし、先頭に立って、この間やってきたことを、大阪に住んでる人ならみんな知っている。私は活動を見ていて、ずっとファンです。なので、私よりも北野さんの方が大変なんじゃないか。私はみなさんの愛で生きていこうと思っている。いろんな方にご支援いただきたい」
自民府議「全力で阻止する」
《谷口氏の政治姿勢について、自民府議団の西野修平政調会長は2月1日に自身のツイッターで「安倍元総理肝入りの自民党改憲草案を小バカにする著書を出版するような方を自民党が支援することはあり得ません。そんな動きがあるなら、全力で阻止する」と書き込んだ。自民は推薦を見送り、自主支援とする方針だが、谷口氏の過去の発言への不満がくすぶり、どこまで支持が広がるかは見通せない》
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大阪ダブル選を巡っては、知事選では、大阪維新が現職の吉村氏の擁立を決定。共産党は無所属で立候補する辰巳孝太郎元参院議員(46)を推薦する。市長選では、大阪維新が府議の横山英幸幹事長(41)の擁立を決定している。