公正取引委員会は9日、スマートフォンの基本ソフト(OS)市場の競争環境に関する実態調査の報告書をとりまとめた。米国の巨大IT企業、アップルとグーグルの寡占を問題視し、自社のアプリやサービスを優遇するといった行為は独占禁止法違反になる恐れがあるとの考えを示した。また、競争を制限しかねない行為をあらかじめ禁止する「事前規制」などの法整備の必要性も提言した。
報告書によると、OS市場は2社が支配的な立場になっており、他社の市場参入が難しくなっていることから、「競争が十分に行われていない状態」と指摘。自社アプリをスマホ端末に最初から採用したり、アプリストアで自社アプリを優先的に表示させたりする行為は、独禁法上の「優越的地位の乱用」にあたる可能性があるとした。
特にアップルがアプリ配信を自社ストアに限定していることは「独占的だ」(公取委の担当者)と強い懸念を示した。
民間の調査によると、国内OS市場は2社で9割以上のシェアを占めている。競争環境が働かない市場では、スマホ利用者の利便性を損なう可能性がある。
公取委は2社に対し、利用者が自社ストアを経由せずにアプリを利用しやすくしたり、複雑なデータ移行のハードルを下げたりするなど運用の改善を求める。
これまでは問題が起きてから当局が調査し、罰則を科す「事後規制」が一般的だったが、変化の速いデジタル市場では対応しきれない側面がある。そのため、政府のデジタル市場競争会議では、巨大IT企業への「事前規制」も検討している。
公取委も同会議と連携し、今回の実態調査を踏まえた上で、法整備も含めた2社による囲い込みの是正を進める方針。(浅上あゆみ)