セレッソ復帰の「香川真司」愛情深い指揮官の下で完全復活目指す

2022年4月にセレッソ大阪のトレーニングに参加し、笑顔を見せる香川真司(左)と小菊昭雄監督。2人は長年、親密な関係を築いてきた=大阪市
2022年4月にセレッソ大阪のトレーニングに参加し、笑顔を見せる香川真司(左)と小菊昭雄監督。2人は長年、親密な関係を築いてきた=大阪市

サッカー日本代表で2014年ブラジル、18年ロシアのワールドカップ(W杯)2大会に出場し、世界屈指の名門、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)でもプレーした香川真司(33)が12年半ぶりに古巣のセレッソ大阪に復帰した。チームを率いるのは、スカウト時代に香川の才能を見いだし、プロの道に誘った小菊昭雄監督(47)。自身を最もよく知る指揮官の下で、希代のテクニシャンは再び輝けるか、注目される。

「これまでは弟のような距離感で接してきた。彼の活躍、悩みに一喜一憂も共にしてきた。しかし、今日からは監督と選手。その関係だけ」。香川がチームに合流した7日の練習後、小菊監督はそう話して〝けじめ〟を強調した。

それぐらい2人は親密な関係を築き上げてきた。出会いは偶然。スカウトを務めていた小菊監督が、狙っていた別の選手の状態を知るため、宮城県の街クラブ、FCみやぎバルセロナの練習に訪れたときのこと。小柄な無名の選手の鋭いプレーに目を奪われた。

それが、神戸市出身で、中学時代から宮城県にサッカー留学していた香川だった。小菊監督はセレッソ大阪の幹部に掛け合って了承を取り付け、獲得に成功。当時、香川は高校2年生。街クラブの選手が高校卒業を待たずにJリーグのチームに入るのは異例だった。

入団当初は守備的MFでプレーしていた香川はブラジル人指揮官、レビー・クルピ監督の指導で前線に配置転換されて攻撃力が開花。シュート練習を繰り返す香川の姿を見守り、支えてきたのも、そのころはトップチームのコーチを務めていた小菊監督だった。

セレッソ大阪一筋で、兄貴分として多くの選手と関わってきた小菊監督は昨年のW杯カタール大会に出場した南野拓実(ASモナコ)と香川の違いをこう話したことがある。「若いころから大きな夢を持って取り組んでいたのは2人に共通している。ただ、拓実は常に勝ちたい気持ちを前面に出していたが、真司はマイペース。自分のやりたいことを淡々と意識高く行っていた」。そのひたむきさが、香川を日本のトッププレーヤーに押し上げた。

香川の努力を知るからこそ、小菊監督は「彼がいつも通りプレーすることが、若手にもいろんな影響を与える」と断言する。一方で、年齢や実績にこだわらない公平な競争をポリシーに掲げており、香川を特別扱いする考えはまったくない。「求めるのはパフォーマンスだけ」と小菊監督。香川も「今は選手と監督の関係以上ではない」と言い切る。真っすぐな性格の小菊監督だから、香川もセレッソ大阪に復帰する気持ちになれたのではないか。

その上で、小菊監督は昨年11月に慢性的な痛みを抱えていた左足を手術した香川をこう思いやる。「彼は長い間、痛みを伴いながらプレーしてきた。100%の状態になってから試合でプレーさせたい」。そこは、弟分の完全復活を願う愛情にあふれていた。

香川真司(かがわ・しんじ) 1989年3月17日生まれ、神戸市出身。高校2年時にセレッソ大阪に入団した。2010年夏にドルトムント(ドイツ)に移籍し、12年にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)へ。ドルトムント復帰後、トルコやスペイン、ギリシャ、ベルギーのチームを渡り歩いた。日本代表ではW杯2大会に出場。国際Aマッチ97試合に出場し、31得点。

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