トルコ南部を震源とする地震で、シリアではアレッポなど北部一帯を中心に大きな被害が出た。8日時点で死者は2500人に上る。2011年に始まった内戦を経て被災地周辺はアサド政権と反体制派の支配地域が入り乱れており、海外の救難チームの入国や支援物資の輸送に支障が出ることが懸念される。地震が民衆の困窮に追い打ちをかけることは必至だ。
地震で大きな被害が出たシリア北部のうち、主要都市アレッポの周辺はアサド政権側が支配している。しかし、北西部では国際テロ組織アルカーイダ系やトルコ軍が、北東部では少数民族クルド人の民兵組織が影響力を持つ。これまでの対立の構図や勢力争いもからみ、被災者救援で協力し合うかは見通せない。
トルコ国境に近いシリア北西部ジンディレスの団体職員、ハサン・ジェニドさん(28)は8日、産経新聞の電話取材に「内戦中の砲撃で多くの建物やインフラが破壊され、地震の際に耐えられず倒壊した。救急救命チームは機材や訓練が不十分で、被害に対応できていない」とし、状況は危機的だと話した。
英BBC放送(電子版)によると、アレッポでは自宅が残っていても立ち寄ろうとしない住民がいる。余震で倒壊するのを恐れているためで、多数の人が行き場を失っている。周辺では家屋が倒壊して多数ががれきの下敷きになっており、通信網が寸断されて連絡が取れない地区もある。
シリア北西部にはトルコから物資が搬入できる国境検問所があるが、ロイター通信は7日、国連当局者が「道路はいくつかが破損して近づけない。対処すべき物流の問題がある」とし、いつ物資搬送が復旧するか見通しがつかないとの見方を示したと伝えた。
このルートにはシリアの400万人が依存しているが、支配できていないアサド政権はこのルートによる物資搬送に反対している。(中東支局 佐藤貴生)