2022年の世界のスマートフォン販売数は、過去10年で最低の水準に落ち込んだ。秋までは唯一堅調だったAppleも、中国のゼロコロナ政策に翻弄され急失速した。
市場の回復が遅れ、23年の販売も低迷するとの見方が支配的ななか、各社はハイエンドのシェア獲得に照準を定め、折りたたみスマートフォンがAndroid勢の新たな戦場になっている。
唯一堅調だったApple、中国での想定外
Appleが今月2日発表した22年10~12月期の売上高は前年同期比5.5%減の1172億ドル(約15兆円)で、純利益が13%減の299億9800万ドル(約4兆円)だった。減収は約4年ぶりで、売上高、利益ともに市場予想を下回った。
Appleの業績悪化は早くから予想されており、ニューヨーク証券取引所で23年最初の取引となる1月3日に、21年3月以降初めて時価総額が2兆ドル(約260兆円)を割った。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は同12日、23年の自身の報酬総額を22年(9942万ドル、約130億円)の半分以下の4900万ドル(約64億円)に引き下げると明らかにした。
不振の原因はいくつかある。iPhone、Macの販売が振るわなかったこと、ドル高で海外売上高が目減りしたこと、そして最大の想定外は、iPhone 14の需要がピークになる同期に中国がゼロコロナ政策で混乱し、iPhoneの生産が滞ったことだ。
22年は中国でオミクロン株の感染が流行し、上海が3カ月にわたってロックダウンした。経済への影響は甚大で、市場調査会社のCounterpointによると同年4~6月の中国のスマートフォン販売台数は同14.2%減少した。
だが、中国の主要メーカーの大半が出荷台数を大幅に減らすなかでも、21年10~12月期に売上高、純利益が四半期ベースで過去最高を記録したAppleは、引き続きiPhone 13が好調で勢いは衰えなかった。iPhone 14の発表を控えた22年秋ごろまでは10~12月がAppleにとって最大の稼ぎ時で、業績も拡大すると見られていた。
世界最大のiPhone工場で従業員10万人不足
目算が狂ったのは、22年秋の新型コロナウイルスの感染再流行だ。世界のiPhoneの半分を生産する鴻海精密工業(ホンハイ)の鄭州工場で10月に感染者が出ると、同工場はゼロコロナ政策を理由に従業員の行動を厳しく制限した。