<特報>政府、フィリピンに「非ODA」活用へ 中国にらみ安保能力強化

衆院予算委に臨む岸田文雄首相=8日午前、衆院第1委員室(矢島康弘撮影)
衆院予算委に臨む岸田文雄首相=8日午前、衆院第1委員室(矢島康弘撮影)

政府は昨年末に閣議決定した国家安全保障戦略など「安保3文書」で新たに設けた同志国の軍に対する支援として、フィリピン政府に政府開発援助(ODA)とは別枠の「安全保障能力強化支援」を行う方向で検討に入った。9日の日比首脳会談後に発表する成果文書に盛り込みたい考え。実現すれば「非ODA」の枠組みを活用した初めての案件となる。複数の政府関係者が8日、明らかにした。

政府は昨年12月に改定した国家安保戦略で「軍などが裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける」と明記した。同志国の安保能力・抑止力を向上させるため、非軍事分野に限定されているODAとは別に装備品や資機材を供与する取り組みで、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の範囲内で行う。

政府が今国会に提出した令和5年度予算案に同志国の安保能力強化を支援するための「非ODA予算」を初めて盛り込み、20億円を計上。フィリピン政府への具体的な支援内容や支援額については、予算成立後に決定する方針だ。政府関係者は「ODAのように相手の要望を受けるだけではなく、日本の安全保障環境を強化する観点で支援内容を決めたい」と話す。

岸田文雄首相は初来日したマルコス大統領との会談で、幅広い分野で二国間協力を強化しつつ、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を確認する。フィリピン外務省の発表によれば、両政府はインフラ開発、防衛、農業、情報通信技術など7つの分野で協定に署名する予定だ。

日比両政府の安保協力は近年、加速している。背景には東・南シナ海で海洋進出を強める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。

昨年4月には、初の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を東京都内で開き、防衛協力を強化する方針を盛り込んだ共同声明を発表。自衛隊とフィリピン軍が相互訪問する際の手続きを簡素化する「円滑化協定(RAA)」や、物資を融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結に向けた検討を開始することで一致した。

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