にほんの村

果実香る風の谷 徳島・佐那河内村

電照がともるビニールハウスのそばを歩く親子連れ。7年前に村に移住した家族という=徳島県佐那河内村
電照がともるビニールハウスのそばを歩く親子連れ。7年前に村に移住した家族という=徳島県佐那河内村

徳島県佐那河内(さなごうち)村。山合(やまあい)の里で、四季を通じて穏やかな風が吹くことと、嵯峨川などの3つの清流が特徴だ。主産業は農業。かつてはミカンやスダチで有名だったが、今は村が作り上げたブランドイチゴ「さくらももいちご」で知られる。

「さくらももいちご」の電照栽培が行われるビニールハウス=徳島県佐那河内村
「さくらももいちご」の電照栽培が行われるビニールハウス=徳島県佐那河内村
高台から見た佐那河内村の全景
高台から見た佐那河内村の全景
出荷される「さくらももいちご」
出荷される「さくらももいちご」
「さくらももいちご」の電照栽培が行われるビニールハウス
「さくらももいちご」の電照栽培が行われるビニールハウス

夕暮れ時、高台から眺めると、イチゴ栽培のビニールハウスに、ぽつりぽつりと光がともった。生育を促進するための電照で、収穫時期の冬場に行われる。

イチゴ作りが盛んになったのは昭和60年ごろという。特産のミカンが同56年2月の冷害でいっせいに枯れたのをきっかけに転換。平成4年にはブランドイチゴ「ももいちご」に村をあげて取り組み、甘く大玉な高級イチゴで全国に名前を売った。

同18年からは、サクラの時期まで出荷可能な新ブランド「さくらももいちご」の生産を開始。昨年11月29日の初競りでは1パック16個入り16万円の高値がつくブランドに成長。希少性から「幻のイチゴ」と呼ばれるほどになった。

「さくらももいちご」の収穫をする香川義裕さん
「さくらももいちご」の収穫をする香川義裕さん
電照がともるビニールハウスのそばを歩く田口さん一家
電照がともるビニールハウスのそばを歩く田口さん一家
収穫された「さくらももいちご」。陽を浴びて宝石のように輝いた
収穫された「さくらももいちご」。陽を浴びて宝石のように輝いた
高台に設置された半鐘が村を見守る
高台に設置された半鐘が村を見守る

収穫は夜明けと決まっている。一番冷える時間が最も実が締まるからだ。イチゴ農家の栗坂政史さん(49)は「『やっぱり食べてよかった』と思ってもらえるようなイチゴを作り続けたい」と話した。

村の宝ともいえるブランドイチゴだが、後継者難を抱えている。生産農家は平成12年の36戸から、今年は20戸まで減少。ブランド継続には出荷量安定が不可欠のため、あの手この手で若手を呼び込んでいる。今年4月に新規就農者研修として「佐那のいちご塾」を開講。1期生2人を受け入れることになっている。

「さち香る 風の谷」。村は自らの土地を、そうPRしている。幸いに満ちた穏やかで、豊かな里をめざし、今も取り組みは続いている。

〈面積〉約42・28平方km

〈人口〉2171人 (令和5年1月31日現在)

イチゴの他にスダチやミカンなど柑橘類の生産が盛んで、斜面には段々畑が連なる。標高約1000メートルの大川原高原はアジサイの名所で、初夏は観光客でにぎわう。

収穫される「さくらももいちご」
収穫される「さくらももいちご」
朝日を浴びながら「さくらももいちご」を収穫する栗坂政史さん
朝日を浴びながら「さくらももいちご」を収穫する栗坂政史さん
先輩農家とともに「さくらももいちご」の出荷を行う香川義裕さん(右)
先輩農家とともに「さくらももいちご」の出荷を行う香川義裕さん(右)
「さくらももいちご」を収穫する栗坂政史さん
「さくらももいちご」を収穫する栗坂政史さん
柑橘類の生産も盛んな佐那河内村。冬の間にみかんを蔵に貯蔵する光景も村ならでは
柑橘類の生産も盛んな佐那河内村。冬の間にみかんを蔵に貯蔵する光景も村ならでは


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