4月9日投開票の大阪府知事、大阪市長のダブル選の「戦いの構図」がほぼ固まった。大阪の経済人らが設立した政治団体「アップデートおおさか」が8日、大阪市内で会見を開き、知事選に法学者の谷口真由美氏(47)、市長選に自民党市議の北野妙子氏(63)を擁立すると発表。両氏は「市民派」を掲げ、政党色を出さずに無党派層などへの浸透を狙う。大阪維新の会と対決してきた自民党は推薦を見送り、自主支援とする方針だが、谷口氏の過去の発言への不満がくすぶり、どこまで支持が広がるかは見通せない。
過去発言に反発
谷口氏は平成29年5月、自民の改憲草案について、評論家らとの対談形式で出版された「お笑い自民党改憲案」(金曜日)で、「政権与党である自民党が稚拙なアホみたいな改憲草案をたたき台にするとは」と痛烈に批判。その後、岸田文雄政権が誕生した際には、週刊誌のインタビューで「岸田さんは本当は何がやりたいのか見えてこない」などと語った。
こうした過去の発言に、自民の府議や市議からは「支援をすれば、支持者がいっぺんに離れる」といった反発の声も上がる。
ある府議は「谷口氏の応援はできない。思い入れもないし、どんな人物かも知らない」と不満を漏らす。
また、ある自民府議がツイッターに「そんな動きがあるなら、全力で阻止する」と書き込むなどし、波紋も広がった。
アップデートおおさかは、前回大阪府知事選で落選した元副知事、小西禎一氏を中心に経済人や有識者、弁護士らが呼びかけ人に名を連ねる。小西氏によると「あくまで市民主体の組織」だ。自民と立憲民主党は「政党色を薄めたい」(立民関係者)と推薦こそ見送ったものの、バックアップする方針で、維新から「大阪の顔」の奪取を目指すために設立された。維新が推進するカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の是非を争点にしたい考えだ。
「共産党に近い」
こうした中、公明党は態度を明確にしていないものの、府本部関係者は「自民が推薦しない候補を個々の議員が応援することは考えにくい」と語る。
知事選では、大阪維新が現職の吉村洋文代表(47)の擁立を決定。共産党は無所属で立候補する辰巳孝太郎元参院議員(46)を推薦する。市長選では、大阪維新が府議の横山英幸幹事長(41)の擁立を決定している。
過去のダブル選とは異なり、維新は今回、大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」を封印する構え。昨年12月に早々とダブル選の候補者を決めた維新はタウンミーティングを開くなどし、着々と準備を進めている。維新代表の吉村氏は8日、谷口氏の印象を記者団に問われ、「共産党に近い主張をする方だ。自民の北野氏と並ぶのは違和感がある」と指摘。「なぜ自民党の北野さんと、反自民でコメントされてきた方が同じ席に座れるのか。選挙のために思想を捨ててくっついたとしか見えない」と述べた。