新型コロナウイルスの猛威が世界を覆った期間、文化芸術に携わる人々も活動に制約を受けた。娯楽だからと片付けられがちでもある分野だけに、ドイツの閣僚が「アーティストは生命維持に必要」と支援を訴えたのを思い出す。実際、音楽の世界ではコロナ禍であってもヒット曲が生まれ、重苦しさを感じながら生きる人々の心を和らげ、勇気を与えた。対面での表現活動が難しいことが、ユーチューブ配信などインターネットを使うアーティストの活動を加速した面もある。
そうした変化の中、いわゆる「顔出し」をしないアーティストという特徴ある一群が存在感を示しはじめている。その一人である新進の女性歌手に注目していたところ、幸いにも同僚の音楽担当記者の協力を得て話を聴く機会を得た。