独占禁止法違反容疑で逮捕された東京五輪・パラリンピック大会組織委員会大会運営局元次長の森泰夫容疑者(55)は日本陸上競技連盟出身。調整能力にたけた実務家として知られ、組織委会長だった森喜朗元首相からの信頼も厚かったとされる。
関係者によると、森容疑者は学生時代に陸上選手として活躍後、鉄道会社に就職。その後も陸上競技への熱は冷めず、平成16年に日本陸上連盟に転職してからは事務方として、19年に大阪で行われた世界陸上選手権などに携わった。
「大きなイベントがやりたい」。さらなる高みを目指し飛び込んだのが、東京オリ・パラの組織委だった。大会運営局で国際オリンピック委員会(IOC)との折衝の矢面に立つなど手腕を発揮した。
語り草となっているのがマラソン・競歩会場の札幌移転だ。開幕まで1年を切った令和元年11月、都心での暑さを懸念したIOCの意向もあり、会場が東京から札幌に移転することが決定。警備や運営計画の変更、大会延期の要因となった新型コロナウイルス対策も重なる中、無事に競技を成立させた。
森容疑者をよく知る知人は「自分の人生の節目という感じで、一生懸命やっていた」と振り返る。組織委トップの森元首相に直接面会し仕事を進めることもあり、周囲には「森元首相に『任された』といわれた」と、うれしそうに話していたという。
一方、森容疑者を古くから知るスポーツ業界関係者は「成功させれば何でも許される、という『ノリ』があった」と指摘する。
逮捕前、受注調整とされた行為に関し「五輪を無事に開催するためにやってきたことだ」と周囲に強調していたという森容疑者。組織委関係者は「まじめで実直だった。談合事件は、組織の問題でもある」と語った。