持って生まれたスター性と歌唱力をたゆみない努力で磨き続ける元宝塚歌劇団雪組トップスター、望海風斗(のぞみ・ふうと)。20日に梅田芸術劇場(大阪市北区)で始まるブロードウェーミュージカル「ドリームガールズ」で主人公のディーナを生きる。映画版ではアメリカの歌姫のビヨンセが演じた役で、ソウルフルな楽曲も魅力だ。望海は「R&Bのリズムやグルーブ感は今までやってきたミュージカルとは違う。難しいけれど、どこまでいけるか挑戦です」と力を込める。
1960年代の米国。コーラスグループを組むディーナ(望海)、エフィ(福原みほと村川絵梨のダブルキャスト)、ローレル(sara)の3人がショービジネス界での成功を夢見て走り抜ける日々を「Dreamgirls」などの名曲で鮮やかに描き出す。
友情や恋に翻弄されながらも歌を通して夢へと駆け上がるディーナの姿は、宝塚でトップスターにまで上り詰めた自身と重なる。ディーナがやがて自立を決意するように、望海は令和3年4月に宝塚を卒業し、人生の第二幕を歩み始めた。
昨年は「INTO THE WOODS」や「next to normal」などのミュージカルに相次いで出演した。「私にとっては宝塚がすごく大きな夢だった。それを超えるものを見つけることが今は一番の夢」と模索しながら舞台に立ち続ける。
武器となるのはやはり歌だ。宝塚の一時代を彩ったその歌唱力は豊かな心情表現はそのままに、新たなステージへと変化している。
「女性のキーはそんなに息の圧がいらない。男役として大劇場で歌い踊るにはものすごいエネルギーを出していたんだと気付きました」。男役として鍛えた歌唱法は女性の音域を邪魔してしまう。「男役の余分な力を抜けるように、焦らず一歩ずつ変えていきたい」とさらなる進化を誓う。
宝塚はかけがえのない財産だ。だが昨年、ミュージカル「ガイズ&ドールズ」でマイケル・アーデンの演出を受けて気付いたことがある。「海外の方なので私が宝塚の男役だったというのはご存じない。まっさらな状態でお会いしたときに『宝塚出身だから』というのを自分の方が意識しすぎていたんだと思いました」
「今までのようにはいかない」と覚悟して外の世界に飛び込んだはずだが、どこか自分を宝塚の肩書で縛っていた。そこから解放された今、望海にはすがすがしさすら漂う。「毎回課題がたくさんある。それを1つずつクリアするのが今は本当に楽しいんです」
3月5日まで。梅田芸術劇場(06-6377-3800)。(田中佐和)