経常黒字10兆円減、過去最大の減少額 令和4年、8年ぶり低水準

財務省=東京都千代田区霞が関(飯田英男撮影)
財務省=東京都千代田区霞が関(飯田英男撮影)

財務省が8日発表した国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す令和4年通年の経常収支の黒字額は前年比47・0%減の11兆4432億円で、8年ぶりの低水準となった。黒字の減少額は10兆1478億円で比較可能な昭和61年以降、過去最大。巨額の貿易赤字を海外投資などから得られる収益で補う構図が続いた。足元では原油価格が落ち着いていることなどから今年は経常黒字の拡大が期待できるとの見方もある。

経常収支のうち、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は15兆7808億円の赤字だった。輸出入ともに過去最大を更新したが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰が輸入額を押し上げ、輸入が輸出を大幅に上回った。

旅行や貨物輸送を含むサービス収支は5兆6073億円の赤字。新型コロナウイルスの水際対策緩和によって訪日外国人客(インバウンド)が急回復したものの、製薬会社などが海外に委託した研究開発費や広告料の支払いがかさんで赤字となった。

一方、海外投資で生じた利子や配当の動向を示す第1次所得収支の黒字額は過去最大となる35兆3087億円。自動車メーカーや商社の海外事業が好調だった。年間を通して堅調で、貿易赤字を下支えした。

ただ、経常黒字額は大幅に縮小。平成23年の東京電力福島第1原発事故後、原発停止を代替する火力発電の燃料輸入が増えた26年の黒字額(3兆9215億円)以来の水準に落ち込んだ。

今年の見通しについて、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「海外の金利が上昇している局面で投資収益が増え、経常収支全体を押し上げる」と予測。海外経済の減速などリスクはあるものの、原油高のピークアウトで貿易赤字幅の縮小も見込まれ、経常収支の黒字幅は拡大傾向で推移するとみている。

同時に発表された4年12月単月の経常収支の黒字額は334億円だった。

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