朝晴れエッセー

「さわす」ということ・2月8日

何度も聞き返してしまった。「さかす?」「さわく?」

ううん、と首を振る友人は新潟出身だ。地元の親から送られてきた柿を、こちらにおすそわけしてくれるという。「さわしてあるから、1週間後ぐらいが食べ頃だと思う」といったのだ。

私の頭の中は、はてなマークでいっぱいになった。「さわす」が分からない。

友人によれば、渋い柿のへたを焼酎につけて、しばらく置いておくと甘くなるという。それを柿を「さわす」というらしい。

私はさっそく、岐阜に住む両親に電話をした。両親は、「さわす」ことを知らなかった。同じ岐阜に住む、夫の両親も知らないという。

ちなみに、私の実家には柿の木畑がある。渋柿もとれるが、もっぱら干し柿にしていただくことが多い。

じつは、岐阜は富有柿の産地として知られ、生産量は全国4位だ。まあまあの「柿どころ」なのである。それなのに、だ。

「さわすって言葉は、初めて聞いたなあ」。調べると、ちゃんと辞書にのっていて、私はそこで漢字も知った。「醂(さわ)す」と書く。「さわす」は、方言ではなく、標準語なのか。

友人に伝えた。「『さわす』がどういうことかわかったよ。早めに食べた柿は渋かったけど、時間をおいた柿は甘かったー。ありがとー」「それはよかった」。友人がにっこりと笑った。私もつられて笑った。

知らないことがある。それは、私をワクワクさせてくれる。これからまだ知る楽しみがあるということだ。

佐竹加織(46) 大阪市住之江区

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