江戸時代の囚人は入牢(じゅろう)の際、裸にされて、衣類の縫い目から髪のなかまで調べられる。牢内への私物の持ち込みはかたく禁じられていた。もっとも幕末になって、世相が騒然としてくると、牢内の規律も乱れてくる。
▼さまざまな方法で金が持ち込まれた。張り番に手数料を払えば、酒やたばこを含めて、何でも買えるようになった。新入りから金を巻き上げた牢名主らは、牢内で博打(ばくち)場(ば)まで開いていたという(『江戸の牢屋』中嶋繁雄著)
▼フィリピンの入管施設でも、「地獄の沙汰も金次第」を地でゆく日々が続いていたようだ。不法滞在などで収容された外国人は通常、共用のスペースで雑魚寝を強いられる。ところが職員に賄賂を渡せば、エアコン、トイレが完備した個室を利用できる。酒やたばこはもちろん、スマートフォンを何台でも調達できる。