パナソニックは、業務用厨房(ちゅうぼう)機器で30年以上使われ、飲食業者などに親しまれてきたシンボルのラッコマークを刷新した。目鼻などを描いた従来のマークから、一筆書きで体を表現したシンプルなデザインに変更した。ラッコは国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定し、日本国内の飼育頭数はわずか3頭にまで減っているが、愛らしい風貌などで絶大な人気を誇る。〝守護神〟ともいえるラッコの力を引き続き借りて、ブランドイメージを高めたい考えだ。
一筆書きで「世界を包む」
東京ビッグサイト(東京都江東区)で7日開幕した業務用厨房機器の見本市「厨房設備機器展」。パナソニックは自社ブースで、食品のおいしさを保てる急速凍結庫や、常温保存・物流が可能なレトルト食品を手軽に製造できる小型高温高圧調理機「達人釜」などの製品とともに、新しいラッコマークを顧客向けに披露した。
水に浮かんだラッコの体を横から捉えた一筆書きのデザイン。目鼻などは省略されているが、貝殻を叩き割るおなじみのポーズを表現している。
従来のマークはもともと、三洋電機が平成2年から使用。パナソニックにはこうしたロゴマークがなく、平成21年に三洋電機を傘下に収めてからも継承して使ってきた。パナソニックによると、ラッコが貝殻を叩き割るときに使う石のように「ユーザーに信頼され、長く愛される製品を提供したい」との思いが込められていたといい、厨房機器のシンボルの役割を担ってきた。
新しいマークは、こうした思いに加えて、「冷熱ソリューションをグローバルでつなぎ、あらゆるシーンで食の価値を高める」という思いを表現。「〝つながる・つなげる〟を、世界を包み込むように描いた一筆書きのラッコで表現している」(パナソニック)という。4月以降、順次出荷する製品に貼り付ける予定だ。
本物は絶滅危惧種も水族館のアイドル
日本にラッコが初めて輸入されたのは、従来のマークの登場から8年さかのぼる昭和57年。日本動物園水族館協会によると、ピーク時の平成6年には28施設で計122頭が飼育されていたが、その後は減少が続く。現在は、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の「メイ」と「キラ」、マリンワールド海の中道(福岡市)の「リロ」の計3頭だけだ。
生息地の米国の捕獲規制で新しい個体が輸入できなくなったことや、近親交配の結果、世代が進むにつれて繁殖能力に問題が生じたことなどが原因とされる。2000(平成12)年にはIUCNが絶滅危惧種に指定した。
ラッコは水族館のアイドルの座を現在もキープしている。昨年のサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会では、リロが水槽に浮かぶ紅白のフライングディスクを拾い、飼育員に渡す形で日本戦の勝敗予想に挑戦。ドイツ戦の勝利だけしか的中しなかったが、日本中を和ませた。
ライバルには卵形の〝珍獣〟も
パナソニック以外のメーカーも自社の業務用厨房機器に動物をモチーフにしたキャラクターをロゴマークに使用している。キャラたちは厨房設備機器展の会場にも登場し、来場者を楽しませている。
象印マホービンのゾウや、タイガー魔法瓶のトラは一般的にもよく知られているが、ホシザキのペンギン、大和冷機工業のシャチなども飲食業者などに親しまれている。
フクシマガリレイが製品で使用するコーポレートキャラクター「フクッピー」は卵が翼を生やした〝珍獣〟だ。フクシマガリレイのホームページによると、飛び回ってスーパーのショーケースや厨房の冷蔵庫などをパトロールするのが仕事で、野菜や果物、肉と魚などと会話する能力があるという。
強力なライバルたちがいる中、パナソニックの「新生ラッコ」は浸透するか。厨房を舞台にした動物キャラたちのバトルの行方が注目される。(宇野貴文)
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厨房設備機器展は10日まで開催。ビジネス関係者が対象で、入場無料。公式ウェブサイトからの事前登録が必要となる。