「事業性見いだせず」 スペースジェット開発中止に三菱重工社長

関係者に公開されたMRJ(ミツビシリージョナルジェット)=2014年10月18日午後、愛知県豊山町(甘利慈撮影)
関係者に公開されたMRJ(ミツビシリージョナルジェット)=2014年10月18日午後、愛知県豊山町(甘利慈撮影)

三菱重工業は7日、国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発を中止すると正式発表した。同社は令和2年10月に「いったん立ち止まる」として開発を事実上凍結していた。再開を探ったものの、事業の成長が期待できないため中止を決めた。

泉沢清次社長は同日の記者会見で「誠に残念だ。機体を納入できずに申し訳ない」と述べたほか、開発中止に至った理由を「再開するに足る事業性を見いだすことができなかった」と説明した。

具体的には開発凍結から時間がたち、一部の機能や装備品で競争力が低下していることや、電動化や次世代燃料への対応で設計見直しが必要になる可能性が高い点を挙げた。また、開発を再開しても商業運航に必要な型式証明(TC)の取得に数千億円規模の資金が必要なことや、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ航空機需要の回復が見通せないことも理由という。

今回の決定に伴い発生する損失はほとんどなく、業績への影響は軽微としている。一方、泉沢氏はスペースジェット開発で得られた知見を、日本と英国、イタリアが進め、同社が中心的役割を担う「次期戦闘機の開発に活用していく」と述べた。

国産ジェット機開発は、国内航空産業の育成を目指し平成20年に事業化が決定された。しかし経験不足などで開発は遅れ、当初25年としていた初号機納入が6度にわたり延期された後、令和2年10月に開発を事実上凍結していた。

三菱重工がスペースジェット開発中止へ

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