3年に1度行われる介護保険制度の改正を令和6年度に控え、今年は詰めの議論が進む。7年には団塊の世代が75歳以上になり、後期高齢者は日本の全人口の2割近くを占めるようになる。膨らむ費用を誰がどう負担し、サービスをどう提供するか。制度を持続させるためには、抜本的な見直しが必要になる。一方で、現場ではテクノロジーで負担を軽減し、介護の充実を目指す動きも活発になっている。効率化を進めながら、将来世代に負担を押し付けることのない最適解を示さなければならない。
ICT活用がカギに
ヘッドセットを着用した介護スタッフが、食器を片付けながら独り言をつぶやくようにマイクに話しかける。「記録、佐藤さん、食事、全量摂取」。また、洗面所では手を洗いながら「記録、佐藤さん、様子、お通じがでにくい。対応、前傾姿勢で座っていただくよう誘導」と唱える。すると、ポケットに入れたままのスマートフォンのアプリに介護やケアの内容が自動で瞬時に記録されていく。
人工知能(AI)サービス開発のエクサウィザーズ(東京)による介護記録AIアプリ「ハナスト」は、記入時にスマホを取り出してタップする必要がない。スタッフの発した声は文字情報に変換され、ほかのスタッフへの申し送りや連絡も音声チャットでできる。実証実験では、記録記入などにかかる時間を40分ほど減らすことができた。開発を主導したエクサウィザーズの結城崇さんは「スタッフの介護の手を止めることがない分、利用者さんと向きあう時間、余裕ができる」と強調する。