「ごめんね、お願い戻ってきて!」置き去りにした娘に叫んだ父親 専門家「誰にでも起こり得るミス」

渕上惺愛ちゃんが意識不明の状態で見つかった駐車場=令和4年11月14日、大阪府岸和田市(宇山友明撮影)
渕上惺愛ちゃんが意識不明の状態で見つかった駐車場=令和4年11月14日、大阪府岸和田市(宇山友明撮影)

「お願い戻ってきて!なんで気づかなかったんやろう。ごめんね。戻っておいで!」

大阪府岸和田市で昨年11月、保育所に次女の渕上惺愛(せいら)ちゃん=当時(2)=を預け忘れ、車内に約9時間放置して熱中症で死亡させたとして、大阪府警に重過失致死容疑で書類送検された父親(34)は、車内でぐったりした惺愛ちゃんを見つけ、こう叫んだという。

府警によると、父親は令和3年10月に交通事故に遭い、その年のクリスマスを自宅で過ごすことがかなわなかった。そのため「今年こそは家族でお祝いしたい」と思い、妻と相談の上で「大きいクリスマスツリーを購入した」という。事件当日はそのツリーの配送予定日。翌日は来客があるため、妻に自宅の掃除を頼まれてもいた。帰宅後のことで頭がいっぱいになっていたとみられる。

妻は「夫は家事や育児をちゃんとしてくれ、娘たちをとてもかわいがってくれた」と説明。周囲からも父親が惺愛ちゃんを含め3人の子供を溺愛していたという証言が寄せられた。

子供を車に置き去りにしてしまう事態は各地で相次いでいる。子供への愛情の多寡にかかわらず、誰にでも起こり得るヒューマンエラー(人為的ミス)として認識する必要があると専門家は指摘する。

新潟青陵大大学院の碓井真史(まふみ)教授によると、同時に2つ以上の物ごとに対処する際に必要な脳の働き(ワーキングメモリー)は、ストレスや疲労のほか、焦りがあったり考えごとをしていたりすると、その働きが低下してミスが起こりやすくなる。今回の事件について「考えごとややるべきことなどが重なり、失念する要因はそろっていた」と分析。イレギュラーな作業がある「いつもと違う日」は特に注意が必要だという。

碓井教授は、ドライバーができる有効な置き去り防止策として、貴重品やスマートフォンを子供の側に置いていく▽夫婦間で送り迎えの完了連絡をする▽日課をこなしているかチェックシートを作成する-などを挙げた。

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